これからの「ユニバーサルデザイン」
すべての人が利用したいと思うデザインをめざす
今では、「ユニバーサルデザイン」という用語を耳にすることが多くなってきました。「ユニバーサルデザイン」とは、文化・言語・国籍の違いや老若男女といった違い、障がいの有無などにかかわらず、すべての人が快適に利用できるように製品や建造物、生活空間、情報などをデザインすることです。特に福祉分野への配慮が盛んになり、さまざまなデザインが生み出されてきています。
しかし、特に福祉用具については、障がいのある人が専用に使うものという印象のデザインが多いようです。機能面を追求するあまり、冷たい印象を受けるデザインになってしまっているのです。『すべての人が快適に利用できる』デザインをめざすわけですから、福祉用具についても『すべての人が利用したいと思う』デザインをめざすことが、これからの「ユニバーサルデザイン」のあるべき方向性であろうと思います。
例えば車いすであれば、いすとして座ってみたときに良いと思えるデザインです。健康な人でも「これ格好いいな、座りたいな、座り心地がいいな」と思えるものです。高齢者や障がいのある人だけではなく、健康な人も使いたくなるデザインをめざすべきでしょう。
道具として愛着がわくようなデザイン
実際に販売品となったもので具体的に説明しましょう。あるメーカーからの要望で、ある福祉用の踏み台を改良することになりました。その踏み台は、段差を解消したり風呂で使用したりするためのものですが、金属製で冷たい印象を与える製品でした。そこで温かみのあるカバーをつけてイメージを変えてみました。製作途中に子どもにとっては危ないと思われる部分が見つかり、最終的に踏み台全体を覆うカバーを作り上げたのです。
結果として四つ足の動物に似た形状となり、福祉用に製作された製品が、子どもを含めた一般の人にも受け入れられるキャラクター化されたデザインになりました。これからは、道具として愛着がわくような、そんなユニバーサルデザインも求められていると思います。
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先生情報 / 大学情報
山口県立大学 国際文化学部 文化創造学科 教授 山口 光 先生
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デザイン学先生への質問
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