上手か下手は問題じゃない! 子どもが表現する豊かな世界とは?

上手か下手は問題じゃない! 子どもが表現する豊かな世界とは?

絵を描くことは好きですか?

「絵を描くことが苦手」という人がいるのはなぜでしょうか? それは子ども時代に、ほかの子どもと比べられたり、「こう描きなさい」と言われたりした体験があるからでしょう。
子どもにとって、絵の上手・下手は重要ではありません。絵画を描くことは、何かを感じ、思考やイメージを持ち、色や形で表現していくことです。本能的な「生きる喜び」であり、「知の統合」が行われ、子どもが成長する上での重要なプロセスなのです。

子どもの世界は「異文化」?

しかし、子どもの感性はユニークで、描いた絵を大人が見ると、まるで「異文化」のように感じられます。例えば、「風」をテーマに絵を描いた時、画用紙にハサミで何本も切れ目を入れる子どもがいました。大人は「作品を傷つけてはいけませんよ」と注意するかもしれませんが、その子は絵に切れ目を入れることで、身を切るような冷たい北風を表現したかったのです。
美術教育者ローウェンフェルドなどの研究により、大人は視覚を重視した客観的・写実的な表現が多いのに対し、子どもは体感したままの主観的・情緒的な表現が多いことがわかっています。「写実的に、上手に描こう」とする表現が増えてくるのは小学校、中学年以降です。ですから保育者や幼児教育者は、幼児期独自の世界や表現方法を理解した上で、作品をきちんと「読んで」あげることが大事なのです。

生活そのものがアート!

教育界では、イタリアの小都市レッジョ・エミリアが始めた教育法が世界的に注目されています。一人ひとりの個性を尊重し、成長に合わせ、子どもが自由にアート体験などに取り組める道具や環境を整えて、表現力や思考力を養っていくプログラムです。
そもそも幼児たちにとっては、毎日の生活自体がアートや学びです。感じること、表現することを繰り返し、豊かな世界や感性を築いていくのです。このように表現やアートに目を向けることで、子どもをより深く理解し、保育・教育に役立てることができるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

椙山女学園大学 教育学部 子ども発達学科 教授 磯部 錦司 先生

椙山女学園大学 教育学部 子ども発達学科 教授 磯部 錦司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

美術教育学、教育学

メッセージ

保育や幼児教育は、「子どもが好き」というだけではできません。「そもそも人間とは何だろう」「子どもが育つとはどういうことだろう」と考えることが大切で、その切り口の1つとして「表現」があると思います。
アートや表現は、子どもの感じ方・見方・考え方・生き方を豊かなものにしていく手段です。それは保育者や教育者にとっても同じことだと言えます。すべての子どもはアーティストです。あなたも子どもたちに負けないように想像力と感性を広げて、自分の中に豊かな世界をつくっておいてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

椙山女学園大学に関心を持ったあなたは

「わたしは、強く優しい、輝く先生になる。」
変化する教育現場、多様化する子どもたちに、強くやさしく、輝く先生を。

子ども発達学科では、長期的な視野と多様な視点で子どもたちを見守る教育者・保育者の養成を目指し、保育と幼児教育、幼児教育と小・中・高等学校教育の垣根を越えた複数の資格・免許を取得できる環境を用意。徹底した少人数教育と個別指導、椙山女学園の総合力を生かした多彩な実習プログラムにより、優れた指導力と豊かな人間性を育みます。