中央集権的な連邦立憲君主制の国、カナダのユニークな政治とは?
イギリス国王が元首の連邦立憲君主制
アメリカ合衆国とカナダはどちらも多くの州から成る連邦国家ですが、両国の政治体制を比較すると、それぞれ異なる特徴を持っていることがわかります。アメリカが各地の州に大きな権限を与えている連邦共和国であるのに対し、カナダはイギリス連邦加盟国の1つで、イギリス国王(女王)をカナダの国家元首に戴く、立憲君主制を敷いている国家です。
イギリス国王の代理人である総督の役割
カナダにおけるイギリス国王の権限は、代理人である総督(Governor General)という役職の人物に委譲されています。また、国内の州にも、それぞれ副総督という役職の人物が任命されています。議院内閣制をとるカナダの政治の実権は、基本的に連邦政府の首相と内閣と立法権を持つ議会、および各州に置かれている州の首相と内閣と議会が握っていますが、国会や州議会で可決された法案は、総督や副総督が署名をすることで初めて成立します。
20世紀初頭にブリティッシュ・コロンビア州の議会で日系移民を排斥する法案が可決されたとき、イギリスと同盟関係にあった日本との関係を重視した連邦政府は、同州の副総督に対し、法案に承認の署名をしないように指示し、法案成立を阻んだことがありました。このように、カナダの政治体制はアメリカの連邦制と異なる「中央集権的な連邦制」とも呼べる特徴を持っています。
時代錯誤に思える体制なのに新しい挑戦ができる
カナダの歴代の総督は、以前はイギリス系の白人男性ばかりが名を連ねていましたが、1980年代からは女性の起用も始まりました。その後はフランス系や香港系、ハイチ系など、さまざまな人種の人々が総督に就任しています。
「立憲君主制の連邦制」という、一見時代錯誤にも思える体制を採用していながら、連邦政府が強い権限を持つことで、かえって柔軟な人材起用や政策が実現できているのが、カナダという国の政治のユニークな特徴と言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大東文化大学 法学部 政治学科 教授 加藤 普章 先生
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