人が「選抜」されるということ
入試は大学に選抜されるということ
大学に入学するには、入学試験に合格しなければなりません。大学入試はたくさんの入学志望者の中から、大学に適した人を選抜するためのシステムです。
この「選抜」は、大学入試だけでなく、人間が集まる場所では人生のあらゆる局面において起こります。例えば江戸時代には、将軍に選抜され、取り立てられて権力を手にした人もいるでしょう。これは時代を問わずあり得るものです。
選抜がなければ限られたチャンスしかない
ただ、江戸時代以前の前近代社会では身分制度があったため、みんなが選抜を意識していたわけではありません。恵まれた地位にいる人たちは、自分たちの子どもを同じ地位につかせるだけでよかったのです。血縁でつながるシステムなので、武士の子は武士になり、商人の子は商人を継いで社会が回っていました。
しかし、そういう社会では、才能のある人が活躍し、世の中がよくなるチャンスが閉ざされてしまいます。それでは社会的に効率が悪いうえに平等でもないので、人が能力により自由に動ける社会をつくるべき、という理念が発達します。それが近代社会の「平等の理念」や「能力主義の理念」です。江戸時代以前の人々とそれ以降の人々が活躍できる範囲は大きく異なるのです。
「教育=選抜」の近代社会
その後、科学技術が重要な社会になり、科学技術の知識を持っていたり、その知識へのアクセスが容易だったりする人たちが重要視されました。明治時代には最先端の欧米の技術を導入するために、旧制高校では外国人が英語の授業をしてエリートの促成栽培をしました。こうして、教育によって科学技術を獲得した人たちが重要なポジションにつき、社会を回していくリーダーになるという社会が出来上がったのです。
教育を通じて身につけたものを持つ人が選抜されるような形で社会が構成されています。それが「近代社会の選抜」という仕組みです。教育を受けることが選抜の機能を果たしていたのです。教育と選抜が重なる仕組みとなって、現代につながってきています。
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先生情報 / 大学情報
東京大学 教育学部 比較教育社会学コース 教授 中村 高康 先生
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