芝居小屋はタイムマシン! 歌舞伎から見える江戸時代の日本人像
芝居小屋は江戸時代へのタイムマシン
芝居小屋はタイムマシンのようなもので、歌舞伎を見ると江戸時代の人々の様子がわかります。テレビも映画もなかった当時、エンターテインメントのひとつが芝居でした。歌舞伎から生まれた「二枚目」や「三枚目」などの言葉が現代でも定着しているように、江戸時代から歌舞伎は人気が高かったのです。歌舞伎を研究していると、人を楽しませるためにはどのようにしたらいいのか、そのさまざまな方法論に気がつくことができます。
江戸時代から日本人は変わっていない?
スーパー歌舞伎II(セカンド)で『ワンピース』が上演されましたが、江戸時代にも『南総里見八犬伝』のような人気作品を歌舞伎化したものがありました。2次元で楽しんでいたものが実体を持って現れることに対する衝撃は、現代も江戸時代も共通しています。歌舞伎の役者を描いた浮世絵をアイドルのブロマイドのように買う人が多かったことからも、江戸時代から日本人の本質はあまり変わっていないと考えることができます。
原作からわかる歌舞伎の変遷
古典芸能は一言一句昔のまま演じられているわけではなく、歴史とともに変化しています。古い歌舞伎の台本に、貼り紙をして修正を加えている箇所があり、上演の変遷を見ることができます。
例えば、現代でも人気のある『助六』という作品があります。本来3時間かかる作品ですが、現代の上演時間に合わせて2時間ほどにしています。しかし元の台本を読むと、カットしている場面にこそ、登場人物についての理解が深まるやりとりがあったことがわかります。例えば、追っ手から逃げている主人公の助六を恋人の揚巻(あげまき)がかばうシーンがあります。ナンバーワン遊女である揚巻が追っ手に対して、「もし私に傷が付いたらこの吉原(よしわら)中が暗闇になるぞ」と啖呵(たんか)を切るという見せ場なのですが、現在では概ねカットされてしまいます。観劇から一歩先に進んで台本を分析すると、歌舞伎の世界をより深く知ることができるのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授 光延 真哉 先生
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