日本文化は中国の古典につながっている~和漢比較文学~
外国との文化的交流が研究のベースにある
古代から、社会は各地でお互いに交流し合ってきました。そのことが「比較文学研究」の前提です。物質的にだけでなく精神的な、流行や文化芸術なども含めて交流し混ざり合った結果、現在の文化があります。対比によって互いの特徴を浮き彫りにする比較文学研究が始まったのはヨーロッパでした。
比較文学研究の対象を東アジアに焦点を絞って見てみると、例えば日本と中国との間の文化的交流は6世紀あたりから活発になります。日本の古典は8世紀から12世紀にかけて執筆・成立したとされていますが、漢詩はその期間に日本で受容された古代中国文学です。
入ってきた表現が受容される流れをたどる
比較文学研究の例をあげると、菊の花は中国から漢詩とともに平安時代に輸入されました。和歌でも詠まれるようになり、中世から近世へと続くうちにすっかりなじみ、菊の花が大陸由来であることは誰も気にしなくなっていきました。また、よく使われる四字熟語「花鳥風月」が登場するのは世阿弥の『風姿花伝』からで、平安時代に、漢詩の花鳥と風月を日本語でミックスしたようです。三文字の常套(とう)表現「雪月花」も白居易の漢詩に原典があります。中国から入ってきた言葉が、日本社会の内部で受容され、時間がたつうちに文化として血肉化していく流れの解明は、比較文学研究ならではです。
ほかとの比較によって見えてくる、背負った歴史
和漢比較文学研究で常に課題となるのは、これまで解明されてこなかった日本文化の歴史、特に教科書などで知る文化の成り立ちとはちがう流れが日本にあったことを解明していくことです。多くの場合、歴史研究や思想研究との学際的な交流も参考になります。
日本は島国で、文化も純粋培養されているとイメージされがちです。しかし、日本がほかの国々との交流の中でアイデンティティーを練り上げていったこと、他者との関わりの中でこそ、自分たちの文化がはっきりしてくるという視点は常に必要だといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科 日本・アジア専攻 ※2025年4月開設 准教授 宋 晗 先生
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