水辺を憩いの空間に変えるのが、世界の都市デザインの流れ
市長を大統領に押し上げた、ある都市再開発
ソウルの街中に清渓川(チョンゲチョン)と呼ばれる川が流れています。今はその川岸は豊かな親水公園となっていますが、2005年までは、この川は高速道路の下敷きになっていました。韓国の首都ソウルでは、経済成長にともなって車の数が急増し、増えた車に対応するために、川にふたをしてまで高速道路を建設したのです。
ところが、ある市長が高速道路をつぶしてふたをとりはらって、川をよみがえらせました。その市長の名前は李明博(イ・ミョンバク)氏で、彼はこの画期的な事業で人気を集め、後に韓国の大統領に上り詰めたのです。
都市空間についての根本的な考え方の転換
渋滞がひどいから道路を造るという旧来型の発想に対して、李市長はまったく違う考え方を提示しました。そもそも人が住みたくなる町、働きたくなる場所はどうあるべきか、これが李市長の発想の原点です。
高速道路網が張り巡らされて、騒音と排気ガスに満たされた空間と、人が憩うことのできる水辺空間の、どちらを人は求めるのか。経済効率だけを優先したまちづくりから、豊かな環境に恵まれた暮らしやすいまちへ。実は今、まちづくりの基準を見直す動きが世界的に起こっているのです。ソウル・清渓川の事業費は400億円ぐらいでしたが、アメリカのボストンなどでは、高速道路を地下に造るために2兆円を超えるコストをかけています。
水辺は本来、娯楽や文化を生み出す場所
水辺と言えば、以前の大阪は「水都」と呼ばれるほど、川が街中に縦横無尽に張り巡らされていました。かつては全国から集まる米は船で運ばれ、歌舞伎の顔見せにも役者が船に乗って、巡ったのです。日本人が遊びに行く場所は、まず川辺で、歌舞伎なども最初は川原で行われていました。
以前は洪水対策のために水辺が閉鎖されていましたが、防災技術の進歩や、川の水の浄化も相まって、大阪でも北浜や中之島などで、水辺を遊びに活用する動きが出てきています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。