外国人のための、日本語教育のこれから
日本で働くために来日する海外の人材
日本は、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどの国々と、EPA(経済連携協定)という条約を結んでいます。EPAとは、2つの国の間で物流、投資、人材などの障壁をできるだけなくし、さまざまな分野でものやサービスの自由な貿易を進めることを目的とした協定です。
EPAが締結された国、例えばインドネシアからは、看護師や介護福祉士の候補者が毎年数多く来日しています。介護福祉士の候補者の場合、3年間の実務経験を積んだ後、国家試験に合格すれば在留資格を延長することができる取り決めになっています。また、EPA以外にもいろいろな分野での技能実習を目的としてさまざまな国から日本に来ている人もいます。
通常の日本語教育だけでは補えない部分
看護師や介護福祉士候補者の人々にとって、実務経験を積むために働きながら、国家試験に合格できるレベルの日本語を習得するのは、とても大変なことです。また、働く職場によっては、私たちが普段使わないような専門用語や、その職種特有のルールを覚えなければならない場合もあります。介護の現場では、強制や命令ではなく共感的で丁寧な表現が大切ですが、工事現場などでは、「どけ! 危ない!」といった、いざという時に安全を確保するための言葉も理解できなければなりません。通常の日本語教育の手法だけでは補いきれない部分があるのです。
日本を支えてくれる海外の人材を育むために
このように、職種に応じて最適な形の日本語教育を外国の人々に実施していくための手法の確立は、まだまだこれからというのが実情です。質の高い技術や技能を日本で提供することに意欲的な海外の優れた人材が、日本語という壁の前に残念な決断をしなくてすむように、よりよい日本語教育とそれを提供していくためのサポート体制の整備が求められています。日本語教育の質の向上は、これからの日本の社会を助けてくれる海外の人材を育む礎にもなるものなのです。
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