アイドルはすぐには活動休止できない お金から考える世の中のひずみ
お金で世の中のすべてがわかる?
あるアイドルグループが近い将来に活動休止することを発表し話題になりましたが、なぜすぐに活動休止しないのでしょうか。さまざまな理由が考えられますが、経済学的な観点で考えると、グループの活動が年間数十億円の収益を生むからである、ということができます。このように、経済学の世界では、世界中に資本主義が広まった現在の社会のあらゆる問題は、「お金もうけ」を第一とする価値観で説明できると考えられています。
資本主義が生む矛盾を考える
近代経済学の父と呼ばれているアダム・スミスの登場以降、経済学の分野では、経済を「市場原理」に任せることで社会が豊かになると考えられてきました。「市場原理」とは、政府が市場に介入せずに、各人が自己利益(お金もうけ)を追求するということです。しかし、実際はどうでしょうか。例えば若い世代の人口が、上の世代よりも少ない理由は、「市場原理」に従って人件費を削減する企業が増え、非正規雇用が増えたことで、結婚率や出生率が減少し、少子化を招いたから、とも考えられます。
「市場原理」を絶対視せず、格差や景気の不安定性、環境問題といった負の側面も含めて資本主義をとらえなおしたのが、1800年代に活躍したドイツの経済学者マルクスです。彼の考えは「マルクス経済学」という学派を生み出し、今日まで受け継がれています。
経済学で資本主義の矛盾を乗り越える
マルクス経済学の特徴は、少子高齢化やブラック企業、賃金格差といった資本主義が生む社会の「ひずみ」につながる「労働搾取」という問題を考察している点にあります。特に、資本主義社会の中で市場の競争に敗れた人たちに、いかにチャンスを再分配していくかが大きな命題となっています。
社会全体の問題を見つけ、改善の方法を探るこうした思考は、新たなビジネスチャンスを生み出す考え方とも共通しています。資本主義の矛盾を乗り越えていくには、こうした経済学的な素養が求められると言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
同志社大学 経済学部 経済学科 教授 大野 隆 先生
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