NGOが取り組む中国の環境問題

環境NGOの登場と来日
中国最初とされる環境NGOの設立は1994年です。これを中国政府が認めたのは、1992年の地球サミット(国連環境開発会議)の時、中国には環境NGOの会合に参加できる団体がなく、政府に情報が入らず困ったからだといいます。その団体の設立直後に代表が来日して日本の環境NGOと交流し、日本側はいつまで続くか心配しましたが、その後10年も経たずに解散したのは日本側で、中国側は今も健在です。その後、中国政府は、他の環境NGOの設立も認めて数を増やし、民間主導の活動も広がっていきました。
環境問題の多発と取り組みの広がり
中国では、各地で開発が進むにつれ環境問題が多発しました。中でも2005年に東北地方で起きた化学工場の爆発事故では、川に流出した有害物質が数百万人もの飲料水に影響したのに、政府は当初、この事故による汚染を隠蔽(いんぺい)したのです。前後に似たような出来事が相次ぎ、中国全土で徐々に環境意識が高まり、環境問題に取り組む人々も増えていきました。ただし、これはまだ一部の環境意識の高い層に限られています。政府の許可のもとで存在する環境NGOも、政府が定める環境基準や、必ずしも明確ではない許容範囲内でしか行動できません。過度に批判的な運動をすれば、当局から圧力を受けるリスクもあります。環境NGOの活動が、レポートやランキングの公表といった、あえて穏やかな手法をとっているのはそのためです。
ビジネスとしての環境対策
近年は、太陽光や風力発電などを進める動きも加速しています。「環境対策がビジネスにつながる」という中国政府の思惑から、古いソーラーパネルなどをリサイクルする国策企業も設立されました。一方で、「シェアサイクルの山」や「バッテリーが壊れたEV車の山」の映像が世界中に報じられたように、過熱する環境ビジネスが新たな環境問題を引き起こすジレンマも抱えています。中国の環境対策をめぐっては、政府、企業、市民、NGOなどの団体の役割分担や相互関係についての研究が続いています。
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公立鳥取環境大学経営学部 経営学科 教授相川 泰 先生
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中国学、国際協力論、環境社会科学先生が目指すSDGs
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