新しいタイプの風力発電機でエネルギー問題に挑む
期待される自然エネルギーの活用
地球温暖化や砂漠化、石油など化石燃料の枯渇によりエネルギー問題への関心が高まっています。その解決策の一つとして、自然エネルギーの効率的な活用が期待されています。
風力発電では、風の力を利用して風車を回し、その動力で発電機を回転させて電気をつくります。風の力は、風速の3乗に比例します。風車に入る風のエネルギー量と、実際に発電機から取り出すことのできるエネルギー量との比率を「エネルギー効率」と言い、大型風車で30%~40%くらい、小型風車で20%ほどになります。現在、さらなる効率化を求めて研究が進められています。
風向きに左右されない風車
小型風車は大型のものに比べ、発電量に対してのコストが高いことが欠点です。この問題の解消に向け、新しいタイプの風力発電機の開発が行われています。「小型鉛直軸風車」と呼ばれるこの風力発電機は、高さが2m~3mほどで、回転軸が重力の方向、すなわち地面と垂直にあるのが特徴です。地面から垂直に伸びた回転軸の周りを何枚かの羽根(翼)が回っていると言えばイメージしやすいでしょうか。回転軸が地面と水平にある「かざぐるま」形の風車は、風向きが変わったら、風車が風の吹いてくる方角を向かないと羽根(翼)が回りませんが、鉛直軸風車は風向きが変化しても風車の向きを変える必要がありません。
小型鉛直軸風車が活躍する場所
この小型鉛直軸風車の実用化をめざして、羽根(翼)の形や材料、風速に対する回転数の変化についての研究も進められています。風力発電は発電機だけでなく、羽根(翼)の素材や制御システムなど、さまざまな研究がつながりあう総合的な分野です。研究が進めば、より効率のよい風車の設計や制御システムをつくることができるでしょう。そして小型鉛直軸風車が実用化されれば、少量の電力が必要な場所、例えば砂漠やジャングル、山深い地域など、住む人は少なくても電気が必要な場所、さらに高緯度で太陽光発電より風力発電のほうが効率がよい場所に普及すると考えられます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
鳥取大学 工学部 機械物理系学科 教授 原 豊 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
応用数理工学、流体工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?