森林の状況調査は、森林まるごとレーザ・スキャンで!
人工林がCO₂を吸収
日本の森林面積は、国土のおよそ67%、約2500万haに及びます。森林は、自然のままの主に広葉樹で構成される天然林と、木材生産のために植樹された、主に針葉樹で構成される人工林に分けられます。地球温暖化対策としてCO₂の吸収源となり得るのは人工林です。植物は成長時にCO₂を吸収しますが、成長は一定のところで止まるため、以降はそれまでに吸収したCO₂を貯蔵はしますが吸収はしません。つまり、人工林を植え替えて、若い木が育つときにCO₂が最も多く吸収されるのです。
レーザ・スキャンで解析する
日本では昭和初期に林業が盛んになり、天然木を伐採した跡地に針葉樹を植樹しました。しかし、昭和39年に木材の輸入が全面自由化されると、日本の林業は衰退の一途をたどり、現在では放置された人工林が問題となっています。これらの森林を有効に活用するためには、現状を正しく把握しなければなりません。これまでは実際に森林に人が入って調査し、一部の情報を元に統計を使って推定していました。現在では、航空機を飛ばして上空から森林にレーザを照射し、跳ね返ってきたデータを元に3次元の情報を解析する「レーザ・スキャン」が行われています。レーザは上から見える表面だけでなく、樹木の隙間に入って地面にまで到達するため、森林と地面の両方の様子がわかります。1回の調査で約数十平方kmの森林の、1本1本の樹種やサイズを正確に把握することができます。
森林の健全化へ
放置され手入れがされていない森林は、間伐や枝打ちがされていないことから密になり、レーザが地面まで通りにくくなるために、跳ね返ってきたデータの違いで判別ができます。人工林の多くは植樹されてから50年が過ぎると成長しなくなり、伐採と植え替えが必要になります。伐採された木材を有効に利用し、森林を健全に戻すことを考えなければならない時期に来ています。そのための一歩として正確な森林の状況調査が急がれているのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 農学部 生物環境科学科 森林資源管理学研究室 教授 山本 一清 先生
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