教育や地域づくりにも活用されるロボットの未来と課題

教育や地域づくりにも活用されるロボットの未来と課題

ロボットを使った認知症サポーター養成講座

人工知能(AI)を搭載した人型ロボット「ペッパー(Pepper)」は、産業や教育など、さまざまな場面で活用されています。S市では、認知症の高齢者を地域で支えるために、地域の学校で開かれている認知症サポーター養成講座において小学生向けの講義にペッパーが活躍しています。保健福祉職が講師となって小学校に出向き、紙芝居や劇を交えて講座を行うのが一般的ですが、子どもたちの興味と関心をより持続させるため、ペッパーを司会進行役やチューターとして活用しています。講座では、ポイントの部分をしゃべらせたり、クリッカー(無線端末)を使ってアンケートをとったりといった試みが行われています。

緊張を和らげ、具体的な理解を促す

ペッパー活用のメリットはさまざまな面に見られます。一般的な講座における講師と聴衆という関係性では、「人対人」という緊張関係になりやすいことが課題ですが、ペッパーを擬人化することで3者の関係性が作られるため、子どもの緊張が解けやすく、「次は何を話すんだろう」と興味が持続します。
以前の小学生向け認知症学習会では、講座後のアンケートで、「困っているお年寄りに声かけができますか」という質問に3~4割の子どもが「難しい」と答えました。一方、ペッパーが話した講座後のアンケートでは、全員が「困っているお年寄りに一緒にしましょうと声をかける」、「大人に知らせる」と答えました。

ロボットやツールをいかに使うか

ペッパーは人工知能を搭載しているため、自ら学習もしますが、現状ではその範囲は限定的です。ほかにも通信機能やコスト面の課題もあり、ロボットに大きな役割を求めるのはまだ厳しい状況です。認知症サポーター養成講座のように、有効な活用場所はありますが、開発の余地は多く残されています。
2020年には小学校でプログラミングが必修化されます。人と人とをつなぐために開発される新たなツールの特性や使い方を研究し、社会課題の解決に役立てていくことが、情報学の大切な役割なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 現代システム科学域 知識情報システム学類 准教授 桝田 聖子 先生

大阪公立大学 現代システム科学域 知識情報システム学類 准教授 桝田 聖子 先生

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メッセージ

あなたは今の勉強が将来何に役立つのか考えたことがありますか? 勉強だけでなく、私生活においてもいろいろな経験や苦労をし、時にはつらい経験をすることもあるかもしれません。今は実感がないかもしれませんが、今勉強したこと、経験したことはどこかでつながると考えてください。それらが自分の土台をつくるのであり、社会に出た後に必ず役立つはずです。
「これはいらない」と自分から限定するのではなく、いろいろなことに興味を持って「何事にもチャレンジすること」を恐れず、豊かな人生を築いていってください。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。