5感でフィールドを体感! 農業経営を多角的に研究
農業経営を多角的に分析
農業経営について理解し、経営技術を評価して改善策を探るためには、動植物の話だけでなく、消費者や地域資源など農業経営につながるさまざまな要素について考えることが大切です。例えば生産活動に使われる技術の開発には、研究機関やメーカーなどとのクラスター形成(連携)が欠かせません。また生産物が消費者に評価されるためには、消費者の購買行動意識を知る必要があります。そのほか生産活動で生まれる副産物をどう利用するかという環境問題や、使われていない農地の利用問題など、農業経営を取り巻くあらゆる要素を含めた全体的な研究がされています。
ICT導入の課題
経営改善のひとつに、ICT(情報通信技術)やスマート農業の導入があります。例えば、ヨーロッパの酪農生産では、搾乳ロボットなどの導入による酪農の軽労化や自動化が進んでいますが、日本での導入率はまだまだ高くありません。理由は、数億円規模の導入コストが必要なほか、乳牛の日々の個体管理・疾病(病気)の発見などは、生産者の目視による観察(匠の技)が重要であることなどです。ICTの導入を進めるためには、実際に現場へ行ってそこで働く人たちとコミュニケーションをとりながら、課題解決のための方策を考えていく必要があります。搾乳ロボットを導入した酪農家への聞き取り調査から、搾乳ロボットに牛が慣れることで、牛が健康になり、乳量が上がったことなどがわかってきています。
フィールドワークを通じた人のつながりを大切に
文献などで知識を得るのと、実際に自分の目で見たり、聞いたりするのでは、大きな違いがあります。フィールドワークの聞き取りでは、自分の五感を通して価値のある情報を得ることができます。農業に従事する人と仲良くなることで、思わぬ本音を聞けることもあります。今後は、地域振興の観点から研究対象を広げ、酒米から開発して日本酒を地域のブランドとして育てることや、メーカーや研究機関と連携した雑草の対策など、地域の困りごとに取り組む研究への関心が高まっています。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 長命 洋佑 先生
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