足指じゃんけんの「グー・パー」で転倒予防
踏ん張りがきかず転ぶ
高齢者の不慮の事故死について原因を調べると、トップは転倒・転落です。ですから転倒を防ぐことは重要なテーマです。睡眠薬などふらつきにつながる薬を内服していたり、何かにつまずいたり、履物が脱げたり引っかかったりと、高齢者が転倒する原因はいろいろあります。これらの要因を取り除いたとしても、体のバランスを崩したときには、踏ん張りがきかずに転んでしまうのです。踏ん張りがきかない理由の1つは、筋力の低下です。体幹も衰えますが、脚の筋肉が加齢や運動不足によって低下してしまうことが主な要因です。
生活の場では転倒が多い
そこで、足の指に着目し、足の指の握る力や挟む力などの「足趾(そくし)力」を計測し、運動をすることで足趾力がアップするかどうかを見極める実験が行われました。10秒間で足の指を握ったり開いたりする「グー・パー」の動作が何回できるかを数え、次にこの運動を指導します。椅子に座って片足ずつ、かかとを床につけた状態で「グー・パー」を行ってもらうのです。この運動を継続することで、足趾力が向上することがわかっています。
入院生活や地域生活での転倒は珍しいことではありません。転倒予防の一環として足指を「グー・パー」と動かす運動が推奨されています。また、足の指でタオルや新聞紙、ビー玉をつかむ動作を繰り返すことも効果があります。高齢者は、足の指を鍛える動作を日常生活に取り入れる必要があります。
高齢者の転倒は負の連鎖にもつながる
高齢になって転倒し、骨折してしまうと、家から出られなくなって社会との交流が減るなど、負の連鎖が続くケースがあります。動かないことでさらに要介護度も高くなってしまうことでしょう。体の柔軟性もなくなり、こわばりが出てきます。足の筋力低下は、加齢によって避けられない部分もありますが、低下しないよう維持していくことが大事です。そうした観点では、本来、脚の筋力の低下防止のための運動は若い世代から取り組んだほうがいいといえます。
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富山県立大学 看護学部 看護学科 講師 鷲塚 寛子 先生
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