医学的手法と看護的視点から、ケアの効果をデータで実証する
本当に正しく効果的なケアとは
看護学において「これまで良いとされてきたケアは本当に正しいのか」「どんなケアを行えばどんな効果が出るのか」、基礎看護学には、そういったことを実際の数値データをもとに実証し、医療の発展に寄与する分野があります。
例えば、点滴が血管から外れ、薬が皮下に漏れ出す「点滴漏れ」という現象は、薬によっては炎症や痛みをともないます。点滴漏れが発生した場合には、ただちに点滴を中止し、皮下組織に広がった薬が原因で起きる炎症を適度に抑えることで痛みなどの症状を軽減できますが、これまでは数値的なデータが用いられないまま、経験則などが頼りとされてきました。
点滴漏れのメカニズムと対処法を解明
点滴漏れについては、長年、患部を温めるほうがいいのか、冷やしたほうがいいのか、教える人や施設によっても基準がバラバラでした。しかし近年、ケアの効果を科学的に検証する基礎医学的な手法を用いた研究が進められてきました。ここ20年の研究では、点滴漏れが発見されたらすぐに20度程度で冷やすことが、炎症を軽減させ収束に向かわせる効果が高いことがわかりました。今後の課題は、どのくらいの時間冷やすことが良いのかなどを解明することです。
こうした研究は医学や薬学の分野でもアプローチが進められていて、それぞれの専門性や視点を生かしながら、患者さんの負担をより軽減できるような対処法を導き出していきます。
看護師のアセスメント力に還元する
ケアの有効性や確実さが実証されることは、現場で働く看護師にも好影響を与えます。看護師が患者さんの状況を把握し、ケアの方向性を判断したり、評価したりすることをアセスメントと言いますが、温めたり冷やしたりするケアは基本的に肌を通してしか行えません。患者さんの体内がどうなって何が起こっているのかを可視化できれば、それを基にした推測も可能となり、見落としを防ぐことでミスが起こりにくい看護を実現できます。ケアの効果を数値的に解明することが、看護師のアセスメント力の強化にもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 看護学部 看護学科 教授 三浦 奈都子 先生
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