心の傷の癒し方

心の傷の癒し方

心の傷とは

生きていれば誰でもストレスを体験します。ですが、圧倒的な衝撃を受けると、その体験が過ぎ去っても精神的な影響が続くことがあります。そのような状態を、心の傷(トラウマ)と呼びます。心の傷と言っても、程度は様々です。よく休み、話を聞いてもらっているうちに気にならなくなる心の傷もあります。一方で、思い出すのが止まらず、同じ出来事が起こっているような感覚になったり、思い出させるものをひたすら避け、暗い気持ちに沈み込む状態が長く続くような心の傷もあります。特に、重大なトラウマによって日常生活への支障が1カ月以上も続く状態には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)という診断がつくことがあります。

心の傷が癒されるとは

私たちの身体には、傷を治そうとする力が備わっています。怪我をしても、消毒して、薬を塗って待っていると、傷口は癒えていきます。消毒や薬は回復を手伝っているだけで、治しているのは身体です。心の傷も似たところがあります。ショックな出来事の後で思い出したり、相談したりしているうちに、段々とつらさが減っていきます。覚えているけれど、やたら思い出したり、動揺したりしなくなります。人にはそのような適応的情報処理プロセスが備わっているのです。脳が記憶を処理して、心の傷を癒します。
PTSDのように心の傷が癒えなくなるのは、トラウマ記憶の処理が途中で滞ってしまった時です。そのような時は、科学的に効果検証された心理療法を受けると良いかもしれません。EMDR(眼球運動による感作と再処理法)はその一つです。トラウマ記憶の処理を再開させると言われています。

心の傷を扱う心理専門職

心の傷や悩みを扱う心理専門職には、臨床心理士(認定資格)と公認心理師(国家資格)があります。大学の心理学科などで所定の科目を履修し、指定大学院を修了すると試験を受けることができます。最も関連の深い学問領域は臨床心理学です。臨床心理学では幅広い学びを背景として、人の心理に関する課題の解決をはかっていきます。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 人間科学部 人間科学科 教授 菊池 安希子 先生

武蔵野大学 人間科学部 人間科学科 教授 菊池 安希子 先生

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臨床心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

目標を決めて始めたことが三日坊主になることはよくあります。人間は簡単には変わらないものです。ですが、心理療法を受けにこられる方の多くは、懸命に取り組み、実際に変わっていきます。臨床心理学の魅力は、人の「変化の証人」になれることでしょう。簡単な過程ではありませんが、変化を支えられるのがやりがいです。高校生の時の自然な興味・関心を大事にしつつ、もう一方では、どうすれば将来自立して食べて行けるかという現実的なことも意識して、バランスをとりながら進路をさぐっていきましょう。

武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。