健康なまちづくりに向けた「地域診断」
住民の健康状態を把握する「地域診断」
健康は、人が幸せに暮らしていくために重要な要素です。公衆衛生看護学では、地域で生活する人々の健康状態や、生活環境などの実態を把握し、健康を守るためにどのような働きかけが必要かを分析し、判断する方法があります。これは「地域診断」と呼ばれ、都道府県や市区町村で働く保健師は、この地域診断をもとに保健活動を行います。
地域のニーズに応じた健康づくりを計画
地域診断では、出生率や死亡率、人口における各世代の割合といった基本データを評価して、自然環境や交通機関、病院、施設など、暮らしを取り巻く環境についても情報を収集します。同時に、地区の健康増進に関する事業や家庭訪問などで住民と会って、健康や生活の様子について、注意深く話を聞きます。多角的に情報を収集し、個人の健康課題から、その地域全体の健康課題へと、総合的に評価(アセスメント)する視点も重要です。
保健師は地域のニーズに応じた健康づくりについて計画しますが、都市部では住民数が多いため、すべてのニーズに公平に対処することが難しいことも少なくありません。妊産婦や、乳幼児とその保護者、高齢者などの健康や生活での支援が必要な人々や、病気や障がいのために生活が困難となっている人々に、保健師は専門的な知識や技術を用いて働きかけています。
住民の健康を支えるまちづくりに向けて
近年では、住民の健康を重視したまちづくりを積極的に行う市区町村も多く見られます。地域の住民の声を丁寧に聞き取りながら、健康維持のための地域独自の特徴を把握し、それらを地域の政策に反映させていくこともあります。
学問としては、基礎的な一つのテーマを深め、研究を続ける分野もありますが、人々のニーズや社会環境に応じて、研究のテーマや対象の優先度を考えなければならない分野もあります。公衆衛生看護学は後者と見なしてよいでしょう。こうした学問の広がりが、人々の健康を支える基盤となっているのです。
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