経営工学の視点から見る、企業のマネジメント手法
中小企業が被災すると、日本の製造業がマヒする
経営工学とは、「どうすれば企業の生産性が向上するのか?」を考える学問です。例えば2011年の東日本大震災により東北各地の工場が被災して、日本の製造業は大きな打撃を受けました。自動車メーカーのトヨタも震災の影響で一時的に生産停止に追い込まれました。東北で自動車の部品を作っていた企業が被災して、必要なパーツが作れなくなってしまったからです。自動車メーカー、パソコンメーカーなどは自社のみですべてを生産しているわけではありません。多くの部品からなっている商品の部品を、国内外にあるさまざまな中小企業から調達しているのです。
万が一の天災によるリスクを回避
大企業に依頼されていろいろな部品を作る企業を下請け企業と呼びますが、トヨタクラスの大きなメーカーになると多数の下請け企業が存在します。下請け企業のさらに下請けがあり、メーカーもそのすべてを把握しきれていませんでした。東日本大震災ではトヨタの把握していなかった下請け企業が被災してしまい、トヨタの生産に大きな混乱が生じたのです。以降、大手の製造業は下請け企業をすべてリストアップして管理をし、万が一のときでも生産が止まらない態勢を整えるようになりました。
塵(ちり)も積もれば山となる、スタバの改革
もうひとつ、アメリカのスターバックスの例では、業務を効率化するために、25ドル以下の買い物ではクレジットカードのサインを不要にしたり、エスプレッソマシンを新しくすることで、レジの待ち時間や商品提供時間を短縮しました。短縮したのはそれぞれ10秒程度ですが、6年間続けることで大きな成果が出たのです。1店舗の年間売上が20万ドルから94万ドルに向上し、生産性も27%向上しました。
天災などのリスクを見込んで万全の対策を取ったり、作業効率を改善して売り上げを伸ばしたりすることは、これからの時代の企業に欠かせないマネジメント手法と言えます。
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先生情報 / 大学情報
上智大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 ヤコブ ホジャステ 先生
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