講義No.13081 社会学

これでいいの? 日本の男性育休

これでいいの? 日本の男性育休

男性の育児休業とは

日本において、男性も取得できる育児休業制度は1992年に施行されました。これは世界的にも早い時期の施行です。しかし、日本では「子育ては女性がするもの」という考えが根強く、また出産前に退職する女性も多かったため、育児休業を取得する男性はほぼいませんでした。出産後の女性の就業継続が増えた今も、妻である女性が産前産後休業を取り、復帰後も時短勤務で、メインで子育てをします。最近になってようやく、大手企業を中心に男性の育児休業取得が進み、2022年秋には「産後パパ育休」制度のスタートに注目が集まりました。では、海外の男性の育児休業はどうなのでしょうか?

日本と北欧の男性育休の違いはどこに?

男性が育児休業を取るのは当然という北欧などでは、公的保育は1歳からなど、前提が日本といろいろと異なります。しかし最も大きな違いは、両親が両方、交代で取得しないと家計上に損をする仕組みになっていることです。そのため夫婦は時期をずらしながら、交代で育児休業を取ります。例えば妻が8カ月取得したところで職場復帰し、保育園に入れるまでの期間を夫が交代で育休に入るという具合です。そこで初めて夫は手伝いではなく、自立した子育ての担い手になります。

日本は「子育ては女性」が大前提

日本の場合、ようやく男性育休が広がり始めましたが、夫婦が一緒に家にいることがイメージされるのが現状です。制度上も、保育所に入れない場合など母親だけでも子どもが2歳になるまで育休を取得し、給付金を受けとることができます。それは子育てを手厚く支援しているように見えて、実は女性が子育てをすることを大前提にして制度設計がなされているとも言えます。男性の育児休業取得率アップが言われている今、まずは「夫の育休は妻を手伝うためのもの」という認識をやめるところからスタートする必要があるでしょう。女性活躍やジェンダー平等という意味において、日本でも欧州のように夫婦交代で、同等の期間、平等に休業を取得できるような方向づけが望まれます。

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甲南大学 文学部 社会学科 教授 中里 英樹 先生

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メッセージ

好奇心のままに身の回りの知りたいことや疑問を見つけ、それを掘り下げて調べる楽しさを味わってほしいです。私は大学で文学部に入学し、3年生になって社会学を専攻しました。広く世界を見てみたいと思いつつ、関心ごとの出発点はいつも身近にありました。最初は大人になってからの親子関係でしたが、次第に子育て期の働き方に関心が移りました。テーマは変わっても、それが社会にどのような意味があり、どのような変化が必要なのか、常に突き詰めて考えています。こんな思考経験を積んでいくと、人生がより豊かになるはずです。

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国際都市・神戸に位置する本学では、建学の理念「人物教育の率先」を教育の原点とし、ミディアムサイズの総合大学だから実現できる、学部を越えた融合型教育で優れた人材育成を実践しています。現在、岡本(神戸市東灘区)・西宮(西宮市)・ポートアイランド(神戸市中央区)に3つのキャンパスがあり、8学部14学科の多彩な学びを展開。また、全学部の学生がグローバル教育を受けられる融合型グローバル教育や共通教育科目の充実により、異なる学部の学生同士が自然につどい、刺激し合い、融合する学びのフィールドが実感できます。