講義No.09685 地球科学

インド洋の雨が北陸の雪となる? ―地球スケールの天気のつながり―

インド洋の雨が北陸の雪となる? ―地球スケールの天気のつながり―

理想は、「ほどほど」に晴れて「ほどほど」に雨

あなたは、どんな天気が好きですか? 一般的に「晴れ」を「天気が良い」、「雨」を「天気が悪い」と表現しますので、晴れが好きな人が多いのかもしれません。でも、そんな「良い天気」も長く続くと渇水などの問題を引き起こしますし、「悪い天気」も水不足のときには恵みの雨として重宝されます。ですから、どちらも「ほどほど」であることが大事です。しかし「ある天気」が、時として集中的に現れたり、年々少しずつ増えてきて、気がつくと「ほどほど」を超えていたりすることがあります。このような時、大気では何が起きているのでしょうか?

冬の「ほどほど」を超えた降水

北陸を中心とした日本海側の地域では、12月の降水量がこの約30年間で1.5~2倍に増加しています。日照時間も減少していますので、この地域の12月には悪天が「ほどほど」を超えて多くなっていることになります。
冬に日本付近では「西高東低」とよばれる気圧配置により、北西の季節風がふきます。この風が、暖かい日本海で水蒸気を吸収しながらやってくることで、日本海側の地域では雲が発達し、多くの降水がもたらされます。この事実から考えると、悪天の増加は上流である日本海に何か関係がありそうに思われます。しかし原因は、日本から遠く離れたインド洋の雨にあることがわかってきました。実はインド洋の12月の降水も、この約30年間で1.5倍程度に増えています。その影響によって日本付近で低気圧が発達しやすくなり、降水の増加や日照の減少につながっていたのです。

あなたの街の天気も意外な場所とつながっている?

ここで取り上げた遠く離れた場所の天気のつながりを、気象学ではテレコネクションとよびます。2018年夏の猛暑も、フィリピン付近の降水やユーラシア大陸の偏西風の変動に関わりがあったことが指摘されています。こうしたつながりは、ある場所の天気の原因を考える際に、その周囲に目を向けるだけでは不十分で、地球スケールの視点が必要であることを教えてくれます。

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先生情報 / 大学情報

富山大学 都市デザイン学部 地球システム科学科 教授 安永 数明 先生

富山大学 都市デザイン学部 地球システム科学科 教授 安永 数明 先生

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気象学、気候学、大気物理学、自然科学

メッセージ

青空にふわふわと浮かぶ「わた雲」や、不気味にそびえ立つ「入道雲」。上空で細い絹糸のように輝く「すじ雲」や、もこもこと群れをなす「ひつじ雲」。「おぼろ雲」を真っ赤に染めながら沈む夕日や、「雨雲」の切れ間から降り注ぐいくつもの光の筋。
あなたがこうした風景に魅力を感じるなら、気象の世界へ一歩踏み出してみませんか? 空や雲を通じて自然が発するメッセージにじっくりと向き合うことで、まだ誰も知らない天気の仕組みを見つけられるかもしれません。地球温暖化や異常気象などの問題を解き明かす道を、ぜひ一緒に探しましょう。

先生への質問

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