天気もパトロール! 超小型計測器が明かす都市気象の実態

天気もパトロール! 超小型計測器が明かす都市気象の実態

都市の天気は特別?

都市気象学は、都市特有の気象現象やその影響を研究する学問分野です。都市部では、建物や舗装道路、交通量などが自然環境と異なるため、気象の振る舞いも特有のパターンを示します。例えば、都市で気温が周辺地域よりも高くなる「ヒートアイランド現象」や、局地的な豪雨、排ガスがもたらす大気汚染などが挙げられます。しかし、これらの現象を正確かつ詳細に観測する手法は十分に確立されておらず、実態の把握が課題となっています。

パトロールカー搭載で動きながら観測

従来の気象観測は、気象庁の「アメダス」に代表されるように、都市の外れや芝生の上など特定の場所に設置された観測システムを使用する方法が主流でした。しかしこれらの観測は、都市内部の詳細な気象状況を十分に捉えられないという課題がありました。また都市部では、従来の大きな観測機器を設置する場所もありません。この課題に対し、最新の研究では、新たに開発した小型の「IoTセンサ」を、道路を巡回するパトロールカーに取り付けて移動測定する取り組みが行われています。都市内を毎日移動しながら気象データを収集できるため、都市の細かいエリアごとの気象分布をリアルタイムかつ高精度で観測できるようになりました。

快適に暮らせる都市の未来を

新しい移動測定による研究結果から、同じ東京都内においても、地域によって様々な特徴がみられました。高層ビルが密集する東京駅周辺では、比較的涼しい時間帯があり、また、そこから品川や川崎方面へ向かうと気温が上がります。東京湾を囲む湾岸エリアでは、工場や交通からの排ガスが起因しているとみられる気温の大きな変動が報告されています。今後は、これらのデータを基に、ヒートアイランド現象の改善や防災対策への応用が期待されています。
さらに、この移動測定システムをほかの都市や海外の都市部にも展開することで、都市化に伴う気象学的課題への対応を可能にする基盤データを提供して、持続可能な都市環境の実現に貢献することが目標とされています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都市大学 建築都市デザイン学部 都市工学科 准教授 小野村 史穂 先生

東京都市大学建築都市デザイン学部 都市工学科 准教授小野村 史穂 先生

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水文気象学

先生が目指すSDGs

メッセージ

都市での移動気象測定による研究の醍醐味(だいごみ)は、誰も見たことがない「都市のリアルな気象の姿」を明らかにできる点です。私たちが日々感じる身近な大気に注目すれば、都市気象学に一歩踏み入れたも同然です。通学路で気温の違いを感じたり、突然の大雨で不快な気分になる時もあれば、街路樹の木陰でホッと一息付くこともあります。気象がどのように都市環境や人々の活動に影響を与えるのかを考える機会は沢山あるでしょう。データの分析に数学や物理等を要しますが、奥深く面白い世界です。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京都市大学に関心を持ったあなたは

2029年に100周年を迎える東京都市大学は2009年に武蔵工業大学から校名を変更。武蔵工業大学時代の伝統を引き継ぎつつ、自動車、エネルギー、建築、情報といった理工学分野に加え、環境、IoT、メディア、教育など数多くの専門分野を網羅する総合大学として成長を重ねています。今後も東急グループの一員としての強みを生かし、産学連携や地域社会との共同研究を積極的に進めつつ、未来の都市生活を創造し、そのなかで能力を発揮できる専門性と実践力を養成する「都市の総合大学」として、たゆまぬ発展を続けていきます。