新潟と日本の梨農家を救え! 人工授粉がいらない梨の研究
新潟県の梨農家の悩み
新潟県は夏から秋にかけての日照時間が長く、梨の生育に適した気候です。そのため江戸時代から梨の生産が続けられてきました。しかし地球温暖化などの影響で春先の開花期が前倒しになってきたことで、梨農家に新たな悩みが生じています。急に寒さが戻る、雨が降るなど天候が不安定な時期が開花期と重なり、人工授粉がうまくいかないのです。
多くの梨は自分の花粉がめしべに付着しても実がならない、「自家不和合性」という特性を持っています。確実に実をならせるためにはほかの梨の花粉を手作業で付けなければいけません。ところが人工授粉は天気が悪いと成功率が下がってしまうのです。
人工授粉が必要ない梨を開発
そこで、人工授粉をしなくても実がなる「自家和合性」を持つ品種開発が1997年から始まりました。もとになったのは、「おさ二十世紀」という品種です。これは鳥取県の梨農家が偶然発見した品種で、日本梨のなかでも珍しい、自家和合性品種です。この梨をもとに品種改良をすると、自家和合性が遺伝することがわかっています。そこで新潟県でもおさ二十世紀を親に、「新碧(しんみどり)」をはじめとする自家和合性の3品種が開発されました。
最新技術で手間を削減
自家和合性品種は人が手を加えなくても実がなるものの、自然は常に同じ状態ではないため、安定した収穫量が望めるとは限りません。人や機械が手を加えてその不安定さを取り除き、栽培しやすい環境を作ろうと研究が行われています。例えば適度な風をドローンで送る方法です。自家和合性品種は風などで花が揺れると受粉が起こるため、ドローンで人工的に風を送り、無風の日でも対処できるようにします。まずは適度な風の条件を探るための実験が進んでおり、花を揺らして受粉させるには5m/s以上の風速が必要だとわかってきました。ただし、強すぎる風は花を散らしてしまいます。最適な風力や揺らし方、農業用ドローンでその風を再現する方法など、さらなる研究が求められています。
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先生情報 / 大学情報
新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 アグリコース 教授 松本 辰也 先生
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