手のひらサイズの人工衛星で、宇宙環境の変化を追いかけろ

手のひらサイズの人工衛星で、宇宙環境の変化を追いかけろ

宇宙の環境を観測

太陽活動による地球の周りの宇宙環境の変化を「宇宙天気」と呼びますが、宇宙天気の悪化は、地上の電子機器の誤作動など、社会に大きな影響があるため、宇宙天気の予測が求められています。予測のための基本データとして、地磁気の観測が必要です。
現在は、大型の人工衛星に地磁気観測をはじめとする様々な観測機を搭載して1点観測し、それを補うために、地上にたくさん配置された計測器で多点観測しています。

手のひらサイズの超小型衛星

通信や宇宙観測に使われてきた従来の人工衛星は、大型で、膨大な時間と費用をかけて開発して打ち上げる国家プロジェクトでした。しかし、2010年ごろから、小さいものでは10cm³という超小型の人工衛星の技術が発達し、大学の研究グループでも、低コスト・短期間で開発できるようになりました。
最近では、この超小型衛星をさらに低コスト・短期間につくる方法や、そこに搭載できる小型の高性能計測装置の研究が進んでいて、宇宙天気研究への応用も期待されています。

超小型衛星をもっと安くつくりたい

超小型衛星のコストを下げる方法の一つとして、地上ですでに使われている民生(一般向け)の安価な部品を使う研究が行われています。宇宙では、放射線や高熱、真空状態など、地上とは異なる過酷な環境にさらされます。従来の人工衛星にはそうした環境に耐えられる、特別に開発された高価な部品が使われます。ただ、大型の人工衛星1機分の仕事をたくさんの超小型衛星で分担すれば、1機が壊れてもほかで補えるため、超小型衛星に特別な部品を使う必要性は低いのです。そこで、民生品の耐久性を熱真空試験などで確かめて、超小型衛星に使おうという考え方です。
このように、超小型衛星を地球の周りにたくさん配置して多点観測できれば、今よりもっと解像度の高い観測や、様々な宇宙天気の計測ができます。それによって新しい発見もでき、宇宙天気の予測精度が上がると考えられます。そのためにも、安く短期間に、大量に超小型衛星をつくる技術は重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

九州工業大学 工学部 宇宙システム工学科 教授 北村 健太郎 先生

九州工業大学工学部 宇宙システム工学科 教授北村 健太郎 先生

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航空宇宙工学、宇宙惑星科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

本学は、超小型の人工衛星をたくさんつくっていることが自慢です。大学で打ち上げた人工衛星の数が8年連続で世界一です。「超小型衛星試験センター」では、ワンストップで、人工衛星の開発から試験、運用までができる環境が整っていて、「人工衛星づくりを学ぶならここ」と、世界中から研究者、留学生が集まっています。また、人工衛星を活用する研究も行われているので、工学系だけでなく、天文学、情報科学、理学など、様々な興味を持つ人に魅力ある学びを提供できると思います。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学は前身である明治専門学校の開校(1909年)以来、「技術に堪能(かんのう)なる士君子」の養成を教育理念に掲げ、品格と創造性を有した高度技術者・先導的研究者を育成しています。工学部・大学院工学府では学生フォーミュラー大会出場や有翼ロケット打上げ実験、小型人工衛星開発などの学生課外活動が盛んで、PBLなどの講義とあわせて実践力・応用力の強化に力を入れています。また国際交流協定校や海外インターンシップへの派遣を通じてグローバル人材育成にも注力しており、非常に高い就職率に結びついています。