大気や海洋の運動を流体力学で統一的に理解する
大気や海洋の現象を流体力学の理論で説明する
大気や海洋の現象は、空気や海水といった流体の現象と考えることができます。流体の運動は、物理の法則に基づいて刻々と変化を続け、物理の方程式で運動を予測することができます。ただ、一般の流体の運動と違って大気や海洋の運動は、地球の自転や、地球の重力の影響を強く受けています。そのような自転や重力の影響を受けた流体は特に「地球流体」とよばれ、地球流体の運動を研究する学問を「地球流体力学」といいます。地球流体力学は、大気や海洋で起こる現象を、大気や海洋といった対象にとらわれず、物理をつかって統一的に理解することをめざしています。
地球の自転や重力の影響
地球流体は、地球が自転しているために、回転軸と平行な方向に流れがそろう傾向があります。また、地球に重力があるために、地表に近い大気の密度は濃く、地表から離れた大気は薄くなっていきます。これが自然に混ざりあうことはありません。ですから、地表に対して垂直方向の運動やその変化を無視して、水平方向、つまり2次元の流体力学で、いくつかの大気現象や海洋現象を説明することができるのです。さらに回転や重力は、回転や重力がない場合と比べて流体の中に特異な渦や波を作り出します。
2次元流体力学のメリット
大気や海洋の現象を2次元の流体現象とみなすことで、物事が理解しやすくなります。あつかう変数の数や方程式が減るからです。ただ、2次元で説明できない現象もあります。大気の代表的な渦である竜巻には高さがあります。竜巻の渦の軸はゆらゆらと揺れて不安定で、竜巻は移動しながら、時間とともに軸が崩れ、最後は消滅します。このように渦の軸がゆらぐのは3次元の流体の特徴です。ところが、別の大気の渦である台風は、軸は安定しており、進行方向の前方にある台風を追い越したり、二つの台風が一つに合体したりすることがあります。これらの点は2次元の流体力学で簡単に説明することができるのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 理学部 地球圏科学科 教授 岩山 隆寛 先生
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