SDGsにもつながる、伝統服飾から見える異文化理解と多様性
日韓の伝統服飾から見る異文化理解
伝統服飾には、その民族の文化的背景や美意識が込められています。服飾を読み解いていくと、国同士の異文化交流の過程も見えてきます。例えば、江戸時代に朝鮮通信使が日本を訪れた際には、お互いの服飾文化の違いに戸惑う様子が見られました。当時の日本人の記録には、実際の朝鮮通信使の服装とはまったく違う服装が描かれています。しかし互いの文化交流が深まるにつれて、約100年の時を経て日本人は朝鮮の服装を「正しく」認識できるようになりました。このように、相互認識や文化の受容の過程が、服飾の描写の変遷からうかがえます。
西洋から見た日本の伝統服飾
19世紀後半の欧米では、「ジャポニスム」と呼ばれるブームによって日本の服飾が世界に広まりました。当時の欧米の新聞からは、欧米人から見た日本人が描かれています。当時流行したオペラ『ミカド』に登場するはかま姿の日本人男性が、自転車広告のモデルに起用されたり、イギリスの日本人村では着物の着付け体験が行われたりと、日本の伝統服飾は異文化理解の入口として重要な役割を果たしていました。そうした交流を経て、欧米人の見た日本人像は時代とともに変化して、ステレオタイプなイメージから、徐々に多面的な理解へと移り変わっていきました。
伝統服飾の現代的意義とSDGs
伝統服飾は、実は現代社会が抱える課題を解決するための糸口になる可能性があります。例えば日本の着物は古くから天然素材を用いており、サステイナブルなファッションとして注目されています。また戦後の日本では、着物を再利用してカトリックの祭服を作るなどのアップサイクル事例も見られました。一方、韓国の伝統服飾は、男性でもピンクを使用したりするなど現代のジェンダーを超えた表現の自由さがあり、「ダイバーシティ&インクルージョン」の理念に通じる特徴があります。伝統服飾は、サスティナビリティ、ジェンダー平等、異文化理解など、現代社会の課題解決に向けた知恵の宝庫とも言えるのです。
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