ロボットの「歩行」に隠された知られざるメカニズム
歩行ロボットは段差に強い!
例えば木の伐採や山間での果樹の栽培などでは、斜面で作業を行うことが多く大型重機が入りにくいため、ロボットが道具を運んでくれれば作業の負担を軽減できます。
運搬用ロボットを作るとき、移動の仕組みを足による歩行にすると階段などの段差に強くなります。6足より4足、4足より2足と、足の数が少なくなるほどフットワークがよくなりますが、あまり大きなものは運べなくなります。また、足を長くするほど高い段差をクリアしやすくなる半面、足自体の重量も増えてしまいます。用途に応じたバランスが重要です。
衝撃をいかに抑えるか
足の着地の衝撃をいかに抑えるかも歩行ロボットの課題です。歩行により生じる衝撃は軽視できず、人間の靴と同様、足底にどんな材料を使うかも歩行ロボット開発のポイントになっています。衝撃を緩和するもうひとつの方法は、足の関節を使うことです。人間は階段を降りるとき、爪先(つまさき)から着地し、やわらかな足首の動きで衝撃が脳に伝わらないようにしています。ロボットならヒザを2つ作るようにして同じような機能を持たせられますが、その制御のための計算量は格段に増えます。また、動きの自由度が上がる分、どこにどういう体勢で足を着くか、きちんと決めておく必要があります。
高機能で効率的なロボットを
足を上下させると、同時に横方向の回転運動も生まれます。人間は歩行の際、足と同時に反対側の腕も前に出して回転を相殺しています。上半身に荷物を積むタイプのロボットではその方法は使えないので、下半身だけで回転を制御する必要があります。また、足を上下させるには大きなパワーも必要で、大型の運搬用ロボットの場合約3000ワット、家1軒分ほどの電力を使うこともあります。ちなみに人間はとても効率がよく、100ワット程度で動くことができます。エネルギーの観点からも、ロボットの制御はなかなか難しいのですが、歩行ロボットの活躍の場は多くあり、機能が高く効率的な歩行ロボットの実現が期待されています。
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成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 柴田 昌明 先生
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