環境に配慮しながら、経済発展をめざすには
環境経済学とは?
環境経済学は環境保護と経済発展の両立をめざす学問です。例えば、製品の生産・消費には、二酸化炭素に代表される温室効果ガス、有害物質、ゴミなどの排出をともないます。この関係は明白なので、その解決策は、過剰な経済活動を適切に抑えつつ環境配慮を実施するという単純なものです。しかし、これを実行できないことが問題なのです。その原因は、国(自治体)、企業、市民、それぞれの立場での考え方の違いにあります。異なる立場での行動原理を考えるには、ミクロ経済学からのアプローチが有効です。
環境を守る=仕組みを作る
国や自治体は、環境配慮型へと転換する政策を推進します。環境を悪化させる行為に対して税金を課す、あるいは、汚染物質の総量を設定し、それ以上の排出を禁ずる、というのが伝統的政策です。例えば、車の排ガス規制は、ガソリン価格に税金を上乗せし、自動車の無駄な使用を抑制します。ただし、税金は直接的に経済的負担を強いるため、その導入は反対を招いてしまいます。2018年11月、フランスでは政府の環境(燃料)税導入案に対し、黄色いベスト運動という市民の反対デモが起こりました。
環境政策と戦略
環境政策は、各当事者の立場を包括的に考慮されなければなりません。黄色いベスト運動の起因は、環境税による市民の経済的負担への配慮不足でした。一方ドイツや北欧諸国は、環境税の導入時に所得税や社会保障税を減税しました。これは環境税制改革と呼ばれ、環境税導入反対を和らげると同時に、環境配慮と雇用刺激効果が期待される政策設計です。
近年は民間レベルでも環境政策に関する動きが変わってきました。アメリカの市民団体の1つは、市民の立場でありながら、環境税導入を積極的に提唱しています。環境税を導入し、市民に確実に税収を還元してもらうのが彼らの狙いなのです。ビジネスレベルでも、戦略として環境配慮活動を重視する企業や、野心的に高い環境目標を掲げる戦略を取る国・地域もでてきました。今後、ますます環境戦略が注目されていくことでしょう。
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先生情報 / 大学情報
成蹊大学 経済学部 経済数理学科 教授 山上 浩明 先生
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ミクロ経済学、環境経済学先生が目指すSDGs
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