薬の形で、効果が変わる! ~製剤の不思議~
薬の効きやすい人、効きにくい人
薬は、錠剤・カプセル剤・貼り薬・目薬など、さまざまな形をしていますが、病気に効く成分だけでできているわけではありません。例えば、飲み薬には、有効成分を水に溶けやすくするものなど、患者さんの体内に入りやすくするための物質も入っています。なぜなら薬は固体のままでは吸収されず、分子のサイズになって初めて吸収されるので、水に溶かして分子状態にすることが大切なのです。ただ、どのくらい吸収されるかは個人差があるため、薬の効きやすい人、効きにくい人の差が出るのです。
実は薬の多くが吸収されていない?
体に薬を届けるための条件として、1つは細胞膜への入りやすさがあり、分子のサイズや脂なじみの良さが必要とされます。そして、もう1つの条件が先ほども述べた水への溶けやすさです。現在、開発されている薬の7~9割が水に溶けにくい性質を持っており、仮に100の成分を体内に入れても2、3しか吸収されないケースもあります。しかし、吸収されにくいからと多く与えると、人によってはたくさん吸収しすぎて、副作用が起きてしまいます。ですから効率良く吸収されるために、いかに水に溶けやすくするかが研究の大切なテーマとなっています。
小さなバケツが薬を運ぶ名人!
そこで注目されているのがシクロデキストリンという糖です。大きさが100万分の1ミリに満たないシクロデキストリンですが、バケツのような形をしていて、内側は脂なじみが良く、外側は水に溶けやすい性質を持っているので、いろいろな種類の有効成分の分子を中に入れて、効率良く体に届けることができるのです。この物質と製剤の技術を利用すれば、これまで使えなかった薬も使えるようになり、治せなかった病気を治せるようになるかもしれません。
薬剤学・製剤学では、このように薬物や添加物を対象に、分子の動きや相互作用を見ながら、薬の形や必要な場所への届け方も研究されています。
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愛知学院大学 薬学部 医療薬学科 講師 小川 法子 先生
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