魚介類の廃棄物をコラーゲン資源として活用する!
廃棄物の中にあるコラーゲン
私たちが口にする魚介類の多くは、加工品や切り身などにされています。使われずに廃棄処分になる魚介類の皮膚やウロコ、骨には、コラーゲンが豊富に含まれています。コラーゲンは、美肌や健康面において注目されているタンパク質です。
時折、漁業の弊害になるエチゼンクラゲや、取水口から発電所に入り込むミズクラゲも処分の対象となり、これらにもコラーゲンが含まれています。こうした海洋生物から効率よくコラーゲンを抽出し、医薬品や化粧品、食品などの原料として活用できるようになれば、資源の無駄がなくなり、SDGsにつながるでしょう。
クラゲやナマコのユニークな特性
コラーゲンを利用するには、皮膚やウロコ、骨などからコラーゲンを溶かしだすことが必要です。溶解には、タンパク質を分解するプロテアーゼという酵素を活用します。実は、クラゲは自分がもともともっているプロテアーゼで自分を溶かしてしまう性質があるのです。それを利用すると、手間なくコラーゲンを抽出できることがわかりました。
また、ナマコは自在に体を伸縮させることができ、堅くも柔らかくもなります。可食部である皮膚の中にはコラーゲンがまばらに分布し、その隙間に今までにない糖タンパク質があることが新たに発見されました。これがナマコのこのような特性に関連していると考えられます。海洋生物の成分についてはわかっていないことも多く、新しい物質の発見の可能性を秘めています。
新たなコラーゲンの探索
コラーゲンにはたくさんの種類(タイプ)があります。私たちが使うコラーゲンは主にⅠ型といわれるタイプで、魚類の皮膚やウロコのコラーゲンはほとんどⅠ型です。しかし、魚類にはⅤ型やXI型など、含量は低いものの新たな機能が期待されるタイプもあります。さらに、無脊椎動物ではコラーゲンのタイプや特性について十分調べられていないグループもあります。海洋生物のコラーゲンの特性を解明していくことは、それらの新たな用途の開発にもつながっていきます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
福井県立大学 海洋生物資源学部 海洋生物資源学科 教授 水田 尚志 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
海洋生物資源学、水産学、水産化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?