「タッチ」には、心と身体を癒やす力がある!
養護教諭から子どもへのタッチの重要な意味
近年の医療現場では、医療技術の発達などの影響で、医師が患者の体に触って診断する機会が徐々に減ってきました。しかし学校の保健室において、養護教諭が子どもへ「タッチする(触れる)」ことは、非常に大きな意味を持っています。1つはもちろん、ケガや病気の状態をチェックするためです。そしてもう1つ重要な意味は、タッチによって体の痛みを軽減させたり、精神的な安定をもたらしたりすることにあります。
体に触れると「幸せホルモン」が出る!
タッチが心や体に与える影響については、さまざまな研究がされています。実際に体に手を当てたりさすったりすることで、皮膚の表面温度が上がったり、脳の血流が良くなったりするという研究結果が出ています。またタッチによって、幸せホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」という物質が、脳内で分泌されることもわかっています。こうした研究をもとにスウェーデンの幼稚園では、先生が子どもにマッサージしたり、子ども同士でマッサージし合ったりする「タッチ教育」を実施しているところもあります。
「声かけ」や「会話」が子どもを癒やすカギに
では、学校の保健室でも養護教諭が子どもにたくさんタッチをすればいいのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。子どもたちの中には、触れられることに抵抗感がある子どももいます。そうした子どもにむやみにタッチするのは、かえってストレスを高めることになります。また中学生、高校生と成長するにしたがって、養護教諭と生徒の間に適切な距離感も必要になってきます。そこでカギとなってくるのが「声かけ」です。まずは子どもと話をして、「触ってもいい?」と確認してからタッチするようにします。ここでの心のこもった会話も、タッチと同様にオキシトシンを分泌させることがわかっています。養護教諭には子どもの様子をしっかり観察し寄り添いながら、コミュニケーションを図ることが求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
愛知学院大学 心身科学部 健康科学科(養護教諭コース) 教授 下村 淳子 先生
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