アミロイドを作らせない! アルツハイマー病の根源に作用する新薬を
アルツハイマー病の原因
アルツハイマー病は、認知症を引き起こす代表的な疾患です。脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積すると発症します。アミロイドβは、ヒトが生まれたときから脳内で作られ続けているタンパク質であり、通常は一定期間で分解されます。しかし、加齢とともに分解されにくくなると、加速的に脳内に蓄積し、さらにタウというタンパク質の凝集も起こり、神経細胞を傷つけてアルツハイマー病を発症します。
アミロイドβを作らせない!
アメリカの当局から近年承認を得たアルツハイマー病治療薬は、アミロイドβの蓄積を一定程度まで減少させます。この薬により、アルツハイマー病の進行を緩和することは可能ですが、その効果は限定的です。そのため、アミロイドβの生成自体を抑える薬の開発も進められてきました。アミロイドβは、体内のタンパク質APPが酵素によって切られた断片のひとつです。酵素がAPPに引っ付き、チョキチョキと2回切ったらアミロイドβが作られます。つまり、これらの酵素の働きを抑えてタンパク質を切らせなければ、アミロイドβは生成されません。創薬研究により、これらの酵素の阻害剤が開発されてきています。
副作用と薬の開発
しかし、これまでに開発された酵素の阻害剤は、生体に重要な別のタンパクの切断も阻害してしまい、がんを発生させてしまいました。そのため、アミロイドβの生成だけを止める物質の探索が必要と考えられます。ある研究で、APPのどの辺りが酵素に引っ付くのか特定されました。さらに、この部分に先に回り込むような物質を投入すると、APPが酵素に引っ付けずに、APPだけ切断されなくなりました。現在、そのような物質を、モデルマウスで、そしてヒトで試験を進めていくことが大きな目標とされています。アミロイドβの生成メカニズムなど、体内の詳細な機能に関する理解は、病気の根源となる部分に直接作用する薬の開発につながります。タンパク質の切断のメカニズムの解明は、ほかの疾患にも応用できる可能性を秘めた大切な研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪医科薬科大学 薬学部 薬学科 教授 福森 亮雄 先生
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