ヒトの視覚と環境に適応する光をつくり、それを使いこなす光環境技術

ヒトの視覚と環境に適応する光をつくり、それを使いこなす光環境技術

屋内照明の国際的なガイドライン

国際照明委員会(CIE)において、高齢者・弱視者のための屋内照明のガイドラインがつくられました。高齢者は、年齢を重ねるにつれて瞳孔が小さくなるなどの理由により、通常の1.5倍から2倍の明るさが必要です。また、コントラストを強める必要もあります。例えば、階段をシックな黒にしてしまうと段差が見えにくいので、踏み面の端の段鼻に線を引くなどの工夫が必要です。ガイドラインは、視覚の加齢変化の研究成果と弱視者へのインタビューに基づいてまとめられています。これまで空間は平均的な視力の人に合わせてつくられてきましたが、今後は視覚的弱者に適応できるようにする必要があります。

目の多様な光センサーに合わせて光の成分を調合

光がヒトの視覚に及ぼす影響に関する最近の研究では、ヒトの目にはいろいろな光センサーがあることがわかっています。明るいところで働くセンサー、暗いところで働くセンサー、生体リズムのセンサーなどです。それらはそれぞれ波長に対する感度が違います。
そこで、空間の用途とヒトの視覚に応じて波長ごとにエネルギーの量を調整する光源が開発されました。例えば、夜間の街路で明るく感じられる光源をつくりたいのであれば、夜間の暗い場所で働くセンサーの感度は青緑の波長で高いので、それに合わせて青緑に光る蛍光体を加えて光の波長成分を調整するのです。

LEDで炎のゆらぎを再現した和ろうそくも

建築物や都市空間において、安全で快適かつ健康に暮らせる光環境を創造することが求められています。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用することで、光量や光の種類などの自動調整ができるので、その可能性は広がっています。
例えば、和ろうそくの炎が伸び縮みする大きなゆらぎと炎の色のグラデーションをLEDにより再現した行灯(あんどん)が開発され、地域のお寺や観光施設でも使われています。使う人や、状況に応じた光をつくり出し、新技術を活用して使いやすい照明器具として具現化することが必要なのです。

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先生情報 / 大学情報

福井大学 工学部 建築・都市環境工学科 教授 明石 行生 先生

福井大学 工学部 建築・都市環境工学科 教授 明石 行生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築学、建築環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

建築において、「ヒトに優しい光」を実現したいと考えています。そのためには、基礎的な研究の最新の知見を学び、それを生活環境につなげるアイデアが必要です。私の研究は、いわば基礎と応用の架け橋の役目をする研究です。独創的で柔軟な発想ができる学生を求めています。基礎から学ぶことがたくさんありますので、高校で学ぶ数学や物理が身についていれば十分足りると思います。自然に興味を持ち、勉強しながら家や空間と光との関係性を考えていく……そんな研究を一緒にしませんか?

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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福井大学に関心を持ったあなたは

本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で11年連続ナンバー1の実績があります。(H19-29年度)