水害のダメージを最小限に抑える

水害のダメージを最小限に抑える

災害対策に絶対大丈夫はない

近年、台風の巨大化が指摘され、集中豪雨は増加傾向にあります。水害から人と暮らしを守るには、どうすればいいのでしょう。100年に一度の大きな洪水に耐えられる堤防をつくっても、200年に一度のより大きな洪水が来たら壊れてしまい、200年レベルに耐えられても、300年クラスの大洪水がやってきたらと、想定は常にそれを上回る可能性があり、言い出したらきりがありません。残念ながら、災害を正確に予測し完璧に防ぐすべは、現在のテクノロジーをもってしてもないのです。

「減災」というキーワード

東日本大震災後、「減災」という考え方が注目されています。被害ゼロをめざす「防災」に対して、被害をゼロにはできないが、できるだけゼロに近づけようとする取り組みが「減災」です。例えば河川の水災害を防ぐ手立てとして、ダムによる洪水制御や堤防による氾濫防止などがあげられますが、ハード面の対策だけで絶対に安心ということは言えません。もし、堤防から水があふれたら、もし堤防が決壊したらということを考え、ハザードマップ(被害予測をした地図)の作成、正確な情報を確実に伝える仕組みづくりなど、ソフト面を組み合わせることで、想定外に柔軟に対応しようとする動きが高まっています。

ベストが無理ならベターを

「減災」の考え方は、河川の分野では早くから提唱されていました。水害で最もダメージが大きいのは、堤防の決壊です。決壊さえしなければ、被害を最小限に抑えることができます。そこで始まったのが、「スーパー堤防」プロジェクトです。これは堤防を高くするのではなく、盛り土によって幅を広げ、街そのものをかさ上げします。
「河を治める者は天下を治める」ということわざがありますが、自然を人間の意のままにコントロールすることはできません。また、川は人間だけのものではなく、自然環境を守ることも大切です。その現実を受け止め、自然と人間社会がうまく共存していくために、さまざまな模索がなされています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 横山 勝英 先生

東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 横山 勝英 先生

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水工学

メッセージ

私はダムや川、河口といった場所において、水の流れ、土砂や物質の動き、生物の生息状況について研究しています。きっかけは、高校生の頃にテレビで見たドキュメンタリー番組でした。「川にダムをつくったことで水の量が減り、霧が発生しなくなった結果、川のそばで栽培しているお茶の葉が硬くなった」という報告に興味をもったのです。
このように、自然環境と人間社会は複雑に関わり合っています。興味があるなら、机上で知識を身につけるだけでなく、実際に現場で触れながら、環境問題の解決に貢献してください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。