データ不足を乗り越えろ! 行動を認識するディープラーニングの世界
AIが人の行動を認識できたら
スマートフォンには複数種のセンサが搭載されています。加速度センサもその一つで、人の行動に伴ってスマートフォンが動くと、センサによって加速度が計測されます。得られた波形をAIで分析すれば、その人がどんな行動をしたかを認識できます。「歩く」「走る」などの行動は既に精度高く認識できるようになっており、歩数計などに使われています。
加速度センサを使って、より複雑な行動を認識する研究も進められています。これが可能になれば、高齢者の見守りやリハビリテーションの効果測定などへの応用が考えられます。また、スポーツのフォーム分析や、料理をはじめとする手仕事の学習など幅広い分野で役立つ可能性があります。
学習用データ作成の壁
画像認識のAIは数百万から数億枚もの大量の画像データの学習によって鍛えられています。それにより、エッジ(物体の境界)やコーナー(特徴点)など、汎用的な特徴をとらえる能力を身につけているのです。同様に行動認識でも複雑な行動のデータが大量に必要で、さらにそのデータにそれがどういう行動かのラベルをつけるのは非常に手間がかかります。そのため、十分なデータを用意するのが困難なのです。
画像認識AIを行動認識に転用
そこで、別のドメインで訓練されたAIの知識を行動認識に転用するアプローチが試されています。例えば、画像データで訓練されたモデルに処理を加えた行動認識のデータで追加訓練を行ったところ、行動認識データのみで訓練したものよりも精度の高い認識が可能になることがわかりました。ただし、この転用が上手くいく理由はまだ解明されておらず、それが明らかになれば、さらなる精度向上が期待できます。
画像認識と行動認識では、入力データの形式が異なります。前者は画像、後者は波形です。にもかかわらず転用が可能であることから、行動認識に限らず、学習済みのAIの能力を別の分野に活用することで、少ないデータで高度なAIを実現できる可能性も期待されます。
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