「がん告知」という複雑な問題の解決に役立つ看護学の研究
治らないがんをどう告知するか
がんが再発し、末期がんや進行がんであることがわかった患者さんの場合、回復の見込みがないという大切な事実が、本人より先に家族などに告げられ、本人にはすぐには知らされないというケースがあります。事実を知ることでショックを受け、混乱することを避けたいという家族などの意向が働いてのことですが、その後の治療方針や残りの人生の過ごし方を患者さん自身が決定できないという状況が生まれます。そのため、看護学の分野では、がんの告知に関する研究も行われています。
学生の意識調査の結果
ある研究では、大学生を対象に「自分や家族が治る見込みのない進行がんの場合、本人に告知してほしいか」というアンケートが行われました。対象となる大学生は、看護学を専攻する学生が200名、それ以外の専攻が200名です。自分が患った場合は両グループとも8~9割が「告知してほしい」と答えましたが、家族が患った場合は看護学生グループが7割、それ以外のグループは4~5割にとどまりました。この結果から、「自分は知りたいが家族には知らせたくない」と考えていることがわかります。家族への告知については、両グループで3割前後の差がありますが、これは、看護学生が終末医療に関する教育を受けていることが影響しているでしょう。
医療現場の負担を減らすには
がんの告知は、医療従事者にとって大きな負担になっています。進行がんがわかった後に、患者さん以外の家族などで話し合われることが多く、意見や方針がまとまりにくいこともその一因です。先述のアンケートのように、自分や家族ががんになった場合に、どう告知してほしいかを事前に話し合う機会が増えれば、本人や家族、医療従事者にとってもよい状況につながります。
また、看護師の告知への関わり方は、個々の経験に頼る部分が多いのが現状ですが、看護師の役割をより客観的に評価し、改善に生かすためにも、統計をはじめとする看護学的な裏付けをもとにした研究が求められます。
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先生情報 / 大学情報
名桜大学 人間健康学部 看護学科 上級准教授 木村 安貴 先生
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