タンパク質の必要量を計算する、世界初の方程式

タンパク質の必要量を計算する、世界初の方程式

タンパク質量の計算式

人間が生きていくために必要なエネルギーについては、昔から研究が行われており、100年以上前には1日摂取基礎エネルギー量の計算式が作られたほどです。しかし、エネルギー源の内訳については、これまであまり議論されてきませんでした。通常の食事でエネルギー源となる主な栄養素は、糖、脂質そしてタンパク質で、それらの摂取バランスが崩れたり、摂取量が過不足すると、体の構成成分として大切なタンパク質がエネルギーに使われてしまう場合があります。そのため、栄養素をバランスよく摂取することは大変に重要なのです。そこで、一日に必要なエネルギー量に対してタンパク質量が計算できる世界初の方程式「寒河江(さがえ)の式」を使った、栄養素のバランス管理が提案されています。

オーダーメイドの濃厚流動食を

タンパク質の必要量は、健康状態で異なります。寒河江の式を用いると、タンパク質の必要量の差は100Kcalあたりおおよそ1gから5gの範囲であることがわかります。嚥下(えんげ)困難者などに使う濃厚流動食は、それぞれ設定された栄養素のバランスで作られています。これに対して、タンパク質量がそれぞれ1g/100kcalのものと5g/100kcalのものを喫食者に必要とされるエネルギー量で混ぜることで栄養素のバランスをタンパク質の必要量に網羅できる「オーダーメイド」の濃厚流動食が提案されています。さらに、水分調整の幅を広げるため、濃厚流動食の粉末化を試みています。粉末濃厚流動食は水分を含まず軽いため、長期保存や輸送コスト低減のメリットもあります。

卵かけご飯を濃厚流動食に

もし、濃厚流動食が乳糖をエネルギー源としたミルクベースだった時、乳糖でおなかを壊す乳糖不耐症の人は安心して使えないかもしれません。そこでグルコースベースのデンプンがエネルギー源となるご飯をベースに、卵を加えた「卵かけご飯」粉末化濃厚流動食の開発が試みられており、エネルギー源のバラエティー化によって濃厚流動食の選択肢が広がると期待されます。

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山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授 佐塚 正樹 先生

山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授 佐塚 正樹 先生

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食品機能学、生化学

メッセージ

高校では、ぜひ数学と物理をしっかり勉強してください。特に数学は、分野に限らず必要だと思います。数学といっても、難しい公式や複雑な計算式といったことではなく、数学の「意味」を知ってほしいです。例えば、積分は何のために必要かというと、複雑な形の面積や体積を楽に求めるためです。数学の意味がわかれば、技術としていろいろなことに役に立てることができます。そんな数学の勉強には、マイロベックマン著・松井信介訳『数式なしで語る数学』や永野裕之著『とてつもない数学』などがおすすめです。

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