講義No.10336 数学

渋滞の原因を考える~渋滞が起こらない理想の状態とは?~

渋滞の原因を考える~渋滞が起こらない理想の状態とは?~

渋滞が起こる原因を明らかに

車の渋滞はなぜ起こるのでしょうか。私たちは、車が多ければ渋滞が起こると考えています。確かに道路に対してあまりに車が多いと渋滞は起こります。ただ、なかには人間の運転技術や意識で防ぐことができる渋滞もあります。このような場合は、渋滞が起こらない最適な状態を数式でモデル化して、それをコンピュータでシミュレーションすることで渋滞の理由を明らかにできます。

渋滞が起こらない理想的な速度とは

渋滞をモデル化するときに大切なのは、現象を単純化して渋滞の本質的な原因を突き止めることです。そこで、高速道路のように信号がなく、1車線の直線道路を想定します。その中を、渋滞が絶対に発生するほどではない、一定数以上の車が走っている場合に、渋滞が起こらない最適な速度を求めます。人間は前の車が減速したりブレーキを踏んだりすると、0コンマ何秒か遅れて反応します。それが積み重なることで、後ろの車に影響が及び、渋滞が発生します。
検証の結果、その影響を受けない最も速い速度は、一般の道路で時速40キロ、高速道路では時速70キロだということがわかりました。これは方程式でも求めることができます。この速度よりも速いと、反応の遅れの影響を吸収できなくなり、渋滞が起こります。また、渋滞に巻き込まれるときはブレーキを強く踏み減速します。一方、渋滞から出る時は逆に緩やかに加速します。この減速と加速の強さの差も渋滞が起こる原因と考えられています。

実際の道路をシミュレーション

実際の道路では、さまざまな理由で速度変化が発生します。信号はもちろん、緩やかな登り坂やカーブでは自然に減速します。運転技術の未熟さや高齢による衰えも速度変化の原因です。また、車間を詰めすぎると運転が難しくなり速度が不安定になります。日差しの向きで視界が遮られて減速する場合もあります。このような原因は、渋滞の基本原理の応用と考えることができます。原因となるさまざまな要素を取り込むことで、実際の道路の渋滞シミュレーションが可能となるのです。

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久留米工業大学 工学部 教育創造工学科 教授 金井 政宏 先生

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メッセージ

数学が好きな人は、問題を解いていて、「なぜ自分はこんな解き方をしたのだろう」と思ったことがあるかもしれません。例えば、「この補助線を引くと確かに問題を解くことができるけれど、なぜこの補助線を引いたのだろう」と考えると不思議な感じがします。
大学でさらに高度な数学を学ぶと、その理由が明らかになります。また、どう補助線を引いても解けない問題があることも理解できます。高校時代に感じるそのような疑問や不思議さは、将来きっとあなたの役に立つので、大事にしてください。

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