磁石を作るバクテリア「磁性細菌」をナノの世界で見る!
細胞内で磁石を作るバクテリア「磁性細菌」
地球上で最も古い歴史を持つ生物、細菌(バクテリア)ですが、実はその9割がまだ名前もついておらず研究もされていません。研究されている1割の中に、五大陸のどこにでもいて、少し変わった生き方をしている「磁性細菌」がいます。20億年前の化石からも見つかりますが、発見されたのは1975年のことです。細胞の中に磁石を作って一列に並べ、地磁気を感知して地磁気と平行方向、つまり上下に泳ぐ、謎の多いバクテリアです。酸素が苦手な微好気性なので、水中の泥などに薄い層を作っています。
マグネトソームという細胞小器官をもつ磁性細菌
クライオ電子顕微鏡などの登場により、ミクロを超えてナノメートルの世界で何が起こっているかを見られるようになりました。微生物を生きた状態で直接観察できるようになったのです。顕微鏡が進歩するまでは、微生物は単純な構造で、動物や植物の細胞の核やミトコンドリアなどのような、特別な機能を持つ構造体である細胞小器官「オルガネラ」は存在しないと考えられていました。しかし、磁性細菌が磁気を感じるのは、マグネトソームというオルガネラであることがわかったのです。ただし、それがどうやって作られるのか、また上下移動以外にも使われるのかなどは、まだわかっていません。メカニズムは違うものの、渡り鳥など動物が地磁気を察知して長距離移動する仕組みの本格的な解明も待たれます。
微生物の新しい一面を見つける面白さ
バクテリアの細胞内にオルガネラがあるというのは教科書が書き換えられるほどの大発見です。例えば、アナモックス細菌はアンモニアと亜硝酸から窒素をつくるオルガネラをもっています。他にも、カルボキシソームという二酸化炭素を吸収するオルガネラや、ガス小胞という浮きの役割をするものをもつバクテリアもいます。
バクテリアのオルガネラを研究することによって、遺伝子操作で新しい微生物に特定の作用をするオルガネラを作らせるなど、合成生物学分野での応用にもつながると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 理工学域 生命理工学類 准教授 田岡 東 先生
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