講義No.11321 生物学

磁石を作るバクテリア「磁性細菌」をナノの世界で見る!

磁石を作るバクテリア「磁性細菌」をナノの世界で見る!

細胞内で磁石を作るバクテリア「磁性細菌」

地球上で最も古い歴史を持つ生物、細菌(バクテリア)ですが、実はその9割がまだ名前もついておらず研究もされていません。研究されている1割の中に、五大陸のどこにでもいて、少し変わった生き方をしている「磁性細菌」がいます。20億年前の化石からも見つかりますが、発見されたのは1975年のことです。細胞の中に磁石を作って一列に並べ、地磁気を感知して地磁気と平行方向、つまり上下に泳ぐ、謎の多いバクテリアです。酸素が苦手な微好気性なので、水中の泥などに薄い層を作っています。

マグネトソームという細胞小器官をもつ磁性細菌

クライオ電子顕微鏡などの登場により、ミクロを超えてナノメートルの世界で何が起こっているかを見られるようになりました。微生物を生きた状態で直接観察できるようになったのです。顕微鏡が進歩するまでは、微生物は単純な構造で、動物や植物の細胞の核やミトコンドリアなどのような、特別な機能を持つ構造体である細胞小器官「オルガネラ」は存在しないと考えられていました。しかし、磁性細菌が磁気を感じるのは、マグネトソームというオルガネラであることがわかったのです。ただし、それがどうやって作られるのか、また上下移動以外にも使われるのかなどは、まだわかっていません。メカニズムは違うものの、渡り鳥など動物が地磁気を察知して長距離移動する仕組みの本格的な解明も待たれます。

微生物の新しい一面を見つける面白さ

バクテリアの細胞内にオルガネラがあるというのは教科書が書き換えられるほどの大発見です。例えば、アナモックス細菌はアンモニアと亜硝酸から窒素をつくるオルガネラをもっています。他にも、カルボキシソームという二酸化炭素を吸収するオルガネラや、ガス小胞という浮きの役割をするものをもつバクテリアもいます。
バクテリアのオルガネラを研究することによって、遺伝子操作で新しい微生物に特定の作用をするオルガネラを作らせるなど、合成生物学分野での応用にもつながると期待されています。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 理工学域 生命理工学類 准教授 田岡 東 先生

金沢大学 理工学域 生命理工学類 准教授 田岡 東 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生物学、微生物学、分子生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

微生物の世界も技術革新が重要です。近年、顕微鏡技術が発展し微小なバクテリアの細胞の内側が詳しく観察できるようになりました。ナノレベルでタンパク質の分子を見ることは一般的になりましたが、生物の細胞内を分子レベルで観察することは新しい見方です。金沢大学のナノ生命科学研究所では高速原子間力顕微鏡などの世界最先端の顕微鏡が開発されており、基礎研究にとって恵まれた環境です。バクテリアを一個の生物としてとらえ、その中で起きている現象を観察できることは大きな武器となります。ぜひ一緒に研究しましょう。

先生への質問

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金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。