自然炎症のメカニズムを解き明かして慢性疾患の治療を!

免疫反応が病気につながる?
「獲得免疫」とは、ウイルスや細菌が体内に侵入した際、過去の例から病原体かどうかを見分けて排除する仕組みです。これを利用したものがワクチンで、ウイルスの一部分をあらかじめ体に入れることでしっかりと外敵だと認識する力をつけて、本物のウイルスが来たときは体内に入れないようにしています。
まだ獲得免疫のない病原体であっても「自然炎症」担当の免疫細胞、例えば好中球やマクロファージが排除します。とにかく外敵を排除しようと、好中球は危険を察知した部位に集まって活性酸素やタンパク分解酵素を放出するのですが、間違って「自然炎症」が活性化すると、それにより自身の身体も壊れて病気につながることがあります。
自然炎症に関係する疾患
そうした自然炎症に関係する疾患として、NLRP3遺伝子の異常により、生まれた直後から熱が出て関節が腫れる「クリオピリン関連周期熱症」があります。あるいは、太陽光によく当たる鼻や頬に皮疹ができる「全身性エリテマトーデス」です。この病気自体は膠原(こうげん)病の一種ですが、免疫系の異常により紫外線に当たって死んだ細胞を適切に排除できなくなり、自然炎症を起こすことで発症します。また、中高年から増えてくる痛風、動脈硬化といった慢性疾患も自然炎症と関わりがあります。
なぜ尿酸値は高くない方がいいのか
痛風という病気は関節の中で多くなってしまった尿酸が結晶化することにより起こります。結晶化した尿酸を、自然炎症は外敵だと判断して、活性化した白血球が周囲の組織を傷つけてしまうのです。自然炎症を媒介するのは、免疫系細胞から分泌されるサイトカイン、中でもIL-1が重要な役割を果たしています。動脈硬化にも関係しており、健康診断で尿酸値が高いのは好ましくないと言われるのはそのためです。
しかし、尿酸は決して悪者ではありません。細胞を傷つける活性酸素を消し去る分子として重要ですし、特定の疾患に罹りにくくなります。物事は表裏一体であり、細胞や分子にもさまざまな面があるのです。
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