「多義語」を制する者は日本語を制す!
学習が難しい「多義語」の世界
日本語を母語としない人に対して日本語を教えることを、日本語教育と呼びます。日本語を学ぶ人にとって、一つの語に対して複数の意味がある「多義語」は学習が難しい項目だとされています。例えば「出る」という動詞も、「家を出る」と「結果が出る」とでは意味が異なります。一般的に学習者は、単語の意味を一つ覚えると、それ以外はないものと思ってしまいがちです。学び残しになりやすく、習得が難しい多義語に対する意識を調べてその学習過程を明らかにすることは、効率のよい日本語学習方法の確立のために不可欠なのです。
どうやって「多義語」は習得されるのか
日本語は多義語が非常に多い言語です。加えて、基本的な単語ほど辞書の項目では複数の意味が記される場合が多く、上級に進むにつれて母語の知識を使った連想ができない独自の表現が増えていきます。多義語には「中心義」と呼ばれる主要な意味があり、「中心義」が最も習得されやすいといわれています。さらに、「中心義」以外の意味の習得には、使用教材や日常生活でよく聞くといった使用頻度が影響を与えていることが日本語学習者を対象にしたアンケートやインタビュー調査などから明らかになっています。また、知らない多義語の意味に出会うと、日本語能力が低い人は自身の母語の知識に基づいてその意味を推測する傾向があります。
多岐にわたる日本語教育学の守備範囲
日本語教育学とは、人と人とのコミュニケーションが中心にある学問です。対象とする内容は幅広く、多義語のような語彙(ごい)研究から、学習者のモチベーションを高める方法や指導法の研究、各地の日本語教室とその支援研究など、内容は多岐にわたります。
日本語教育の現場で異文化にふれることで、自分自身のコミュニケーションのあり方を見直したり、今の社会の問題点を考えたりといったきっかけが得られます。そのようにして得た気づきから、多文化共生のためにはどうすればよいのか、人々が住みやすい社会づくりを考えていく必要があります。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
四天王寺大学 文学部 日本学科 准教授 麻生 迪子 先生
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