グッピーの交尾と回転寿司の共通性とは?

グッピーの交尾と回転寿司の共通性とは?

グッピーのメスは派手なオスがお好き

オスがとても派手で美しく、それをメスが選ぶという生き物が、世の中には多数存在します。熱帯魚のグッピーもその一種で、オスの尾ひれは赤や青の混じったとてもきれいな色をしています。
例えば、2匹のオスを同時に見せて、メスがどちらを選ぶか実験してみると、必ずといっていいほど、赤い部分の面積が大きく派手な色のオスを選ぶ傾向があります。

最初の出会いを逃さないメス

しかし、実際にグッピーのメスが外でオスと出会うときは、たいてい1匹ずつです。次々に現れるオスを回転寿司に例えることができます。人間なら、1皿しか取れない回転寿司で最初に何を選ぶべきか、一番食べたいものを取るにはどうしたらよいか、かなり迷うはずです。
ところがグッピーの場合、メスは最初に出会ったオスとほとんど無条件に交尾します。複数のオスと同時に出会えたなら、よりきれいな方を選ぶかもしれません。しかし、あまりきれいではないオスでも、見逃すと次のチャンスがない可能性があるため、まずは交尾しておくと考えられます。
これは、回転寿司へ行き、何でもいいから最初に回ってきたものを食べて、とりあえずおなかを満たすのと似ています。このように、グッピーは子孫を残すことを、最優先にして選択しているのです。

人間社会に必要な無駄

生き物は、人間と比べてずっとしたたかなものです。言い換えると、自分の得になることしかしません。無駄なことをしていると得にならず、死んでしまうこともあるからです。比較的高度な知能を持つサルやクジラは遊ぶことが知られていますが、無駄なことをたくさんやるのは人間だけです。
音楽や絵画などの偉大な芸術も、人間の実生活に本当に必要かといえば、そうではありません。しかし、人間の心には潤いや癒やしが必要なので、そうしたものを与えるという意味では、人間社会に欠かせないものです。
大学における基礎研究も同様で、生き物の生態を面白がって探究することも、世界を豊かにする人間特有の文化だといえるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 農学部 生物資源科学科 准教授 長谷川 英祐 先生

北海道大学 農学部 生物資源科学科 准教授 長谷川 英祐 先生

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進化生物学

メッセージ

基礎科学の疑問は、「HOW」と「WHY」のどちらかです。例えば「カブトムシのツノはどうやって長くなるのか?」という疑問はHOWで、答えは、幼虫のときに頭部にある細胞が伸びてツノになる、です。一方、WHYの疑問は、「なぜ角が必要なのか?」で、答えは、オスはエサ場でほかのオスと闘って排除し、メスを獲得するのにツノが必要だからです。両方答えてはじめてツノの意味が理解できます。それが役に立つかどうかは問題が生じてはじめて決まるので、基礎科学の意味は理解することそのものにあるのです。

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。