無農薬・有機栽培の知られざる工夫

無農薬・有機栽培の知られざる工夫

人気の有機栽培農家の生活

農業経済を考えるにあたって、農村の実態を知り、農業に関わる人々に触れるのはとても大事なことです。
例えば、最近脚光を浴びつつある、無農薬の有機栽培を行う農家のあり方を見てみましょう。無農薬・有機農法という言葉には、エコの意味も含めて多くの人が興味を持っています。また生産物をいかに高く売るかという差別化や付加価値が認められるため、市場が拡大していく可能性が認められます。
しかし一方で、有機栽培は非常に難しい農法です。収穫までに雑草にやられて収穫量が半減することも珍しくなく、そうすると販売価格は農薬を使ったものの倍になってしまうこともあるのです。そこで、雑草をいかに駆除するかが大きな課題となってきます。

早期湛水と「生き物の力」を活用

有機栽培の方法を工夫するにあたって、北海道のある農家では、雪解け直後に田に水を張る早期湛水(たんすい)を行い、農地の生き物の力を借りる工夫を導入しました。早期湛水によって代かき(田面を平らにする作業)を2回行い、発芽した雑草を取り除きます。また浮き草やアオミドロ、イトミミズなどの動植物は、田の用水を濁らせる「ドロドロ層」を形成し、雑草の発芽を抑制する効果があるのです。また、湛水の早期化によってイトミミズの数が増加するという調査結果が明らかになりました。
実は、農林水産省が「有機栽培米」について、周辺に生息する生き物を活用することを明記しているのですが、この大切さはあまり知られていません。このように技術的な問題は、実際に農家の人たちが試行錯誤の経験をしながら培ってきたものです。
また、農家の人たちによる直売所に行くと、有機栽培米に対するお客さんの期待や反応が手に取るようにわかります。
農業経営にも、企業のように常に経営改善は必要なものです。現場での技術や実態を実感しながら、研究を進めていくことが求められる分野です。

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酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 教授 吉野 宣彦 先生

酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 教授 吉野 宣彦 先生

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メッセージ

経済とは現場を知らなくては語れないものです。社会科学において現場に行くのは違和感があるかもしれませんが、経済とはお金だけではなく、いろいろな社会行為の積み重ねであり、現場で専門家の話を聞くことは役に立ちます。特に農業経済の場合、農家の技術や、地域との関わりも生産における大きな要素となってきます。また本だけでは理解できない、経験値によって測れるものもあるのです。そのため私はフィールドワークによる実習をとても大切に考えています。

酪農学園大学に関心を持ったあなたは

北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。