流れの「視える化」技術で、心臓が工場で作れるようになる?
見えない流れを可視化する技術
自動車の車体の周りの空気の流れを、見たことがありますか? 空気の動きは通常は目では見えません。しかし機械を通してなら「視る」ことができます。見えない流れを視る=可視化する技術は「トモグラフィー」と呼ばれています。空間的にとらえて視る3Dに加えて時間を加えた4Dで計測する技術が「プロセス・トモグラフィー」です。気体や液体といった流体の中にある「粒の濃度」の変化を視ることができるのが特徴です。
医療分野とのコラボレーション
人間の体には機械的にとらえられる部分が多々あります。心臓が動き、血管やリンパ管を通じて物質が運搬されている様子は外からは見えませんが、プロセス・トモグラフィーを使うと、流体の中の粒、つまり血管中の血栓や、通常の細胞の中に混じっているがん細胞を発見できるのです。プロセス・トモグラフィーの強みは従来のMRI(磁気共鳴画像撮影装置)などと比べ安価で簡素な機器で測定可能で、患者自身が身につけてリアルタイムで自分の体に起こっていることを視られることにあります。医療・工学両面での応用は今後もさらに期待されています。
人の心臓が工場で作られる未来
実は、人間の心臓や眼球といった臓器を体外であらかじめスペアで持ち、悪くなった部分を差し替えて治療する時代が100年以内に来ると言われています。臓器自体はiPS細胞を使って複製することがすでに技術的に可能です。自動車が1枚の鉄の板から始まり、工場のラインの中で、成形され、エンジンなどのパーツが搭載されて生産されていくように、1つの細胞を入れればライン上で増殖して成形され、心臓を作り上げていく方法が検討されています。
そのときに必要とされるのが細胞を分ける技術です。細胞が増えていく過程で良い細胞、使えない細胞に分けて臓器を作り上げていく工程にも、プロセス・トモグラフィーでリアルタイムに悪い細胞の存在を視る機能が役に立つのです。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 工学部 総合工学科 機械工学コース 教授 武居 昌宏 先生
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