住環境と道具のオーダーメイド〜環境を変える作業療法~
オーダーメイドの住環境とは?
高齢者や子ども、あるいは身体障がいや精神障がいのある人にとって、住環境がもう少しその人に合ったものであれば、格段に生活がしやすくなったり、ストレスが軽減されたり、症状が軽くなったりするケースは少なくありません。例えば、高齢者の自宅のトイレに手すりを取り付けるとします。一般的には、便座のそばに縦のポールを付けると、便座に座ること・便座から立ち上がることが、自力で行いやすくなり、自立につながります。しかし、取り付ける位置やポールの色などによっては、使いにくく感じる人もいるのです。使い勝手のよさは、使う人の心身の状態や、日常動作の様子などによって、微妙に変わってくるからです。
道具も個々人に合わせたものを
生活の道具も、オーダーメイドにすることで大きなメリットがあります。例えば、食事で使う「箸」です。手指の機能の低下や、指の変形のために普通の箸が使えなくても、突起やバネなどがついた箸なら使える場合があります。これらを「自助具」と呼んでいます。自助具は、手の大きさ、指の変形の具合、動く範囲、握力などに合わせて、突起の大きさや角度、バネの強度を変えることで、使い勝手が飛躍的に向上します。一人ひとりに合わせることがとても大切なのです。そのため、作業療法士が粘土や木工などで手作りすることも少なくありません。
環境を変えることに着目する
体や心のリハビリテーションをすることだけでなく、少しでも心身ともに使いやすいオーダーメイドの住環境や道具をつくるために、より的確できめ細かいアドバイスを提供することも、作業療法学のテーマの一つです。心身の機能は変わらなくても、環境や道具に着目し、それを少し変えるだけで、できるようになる作業や動作はたくさんあるからです。
こうしたオーダーメイドのサービスを、特定の人だけでなく、多くの人が受けられる仕組み作りも大切です。そのために、道具の製作に3Dプリンターを活用することなど、新しい試みが始まっています。
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先生情報 / 大学情報
帝京科学大学 医療科学部 作業療法学科 講師 澤田 有希 先生
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