マイクロ波を用いた超解像度モニタリング技術
マイクロ波で内部の様子を把握する
マイクロ波とは電波の一種で、現在ではテレビ、携帯電話、電子レンジなど日常生活の多くの場面で利用されています。このマイクロ波を活用して、人体の内部や道路の下、壁の向こうなど、カメラでは見ることのできない場所の状況を撮像しようという研究が行われています。
例えば、マイクロ波を人体に当てることで、がん細胞の有無や形、大きさなどを正確に把握することができれば、X線などを使わないがん検診が可能になります。また、道路やトンネルにマイクロ波を当て、その中にある腐食や亀裂などを見つけて補修することができれば、老朽化による崩壊などを防ぐことができます。
従来は、画像の濃淡で判断
マイクロ波で人体やコンクリートの内部を見るとき、これまでは主に画像の濃淡を読み取る方法がとられてきました。マイクロ波は、物体に当たって散乱(反射)すると、そこは白い画像となります。一方、物体に当たらず、通過したり吸収されたりすると暗く見えます。特に、がん細胞は脂肪組織や乳腺より誘電率や導電率が高いので散乱が強く表れ、そこがより白く見えるのです。ところが、この方法では、がん細胞とそうでないものの境界がぼやけてはっきりしない(解像度が低い)ことがよくあります。そこで、画像の濃淡ではなく、物体の輪郭を抽出する、全く新しい方法が考えられました。
境界線をとらえる画期的な方法
その新しい方法とは、マイクロ波が物体に当たって返ってくる時間を測定することで、物体までの距離を算出し、その情報を数多く集め、統合することで、物体の輪郭をとらえようとする試みです。距離情報は高度な信号処理技術により、高い精度で得られます。この距離情報を「点」で表し、その点をある方法で、物体の境界上の「点」に変換することで、物体の3次元の形状を正確にとらえることが可能なのです。マイクロ波は診断だけでなく、熱によるがん治療などへも応用可能なので、実用化に向けた今後の進展が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 電子情報学プログラム 教授 木寺 正平 先生
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