小さなハートがその証し! シダ植物の秘密を突き止める
二つの姿を持つシダ植物
「シダ植物」は古代からある古い植物というイメージがあるかもしれませんが、種で増える種子植物と同じ時期にできた植物です。種子植物と違ってシダ植物だけが持っている特徴は、完全に別々に生息する二つの姿です。普段目にしているギザギザした葉を持つ方のシダ植物は、実はその片方で、「胞子体」と呼ばれる植物です。胞子体の葉の裏には胞子が詰まった袋があり、それが弾けて胞子が地面に落ちると、「配偶体」という、1センチほどで気づきにくい小さな植物ができます。これもシダ植物です。
配偶体をDNAで調べる
配偶体は精子と卵子のどちらも作れる細胞を持っていて、多くの場合は受精してから次の世代(胞子体)を作りますが、あるシダ植物の種では、精子と卵子は作らずに配偶体だけでも増えることができます。維管束植物の中でこのように配偶体だけで生きて行けるのはシダ植物だけです。
配偶体の多くは数ミリほどの大きさで、小さなハート形をしています。シダ植物には1万2000ほどの種がありますが、その殆どが同じような大きさと形なので、見た目だけでは配偶体がどの種類のシダ植物なのかわかりません。DNAを調べることで、ようやくどの種類なのかが判断できます。
配偶体の生育環境を調べると、湿度が低いなどの胞子体が耐えられない場所にも生息していることがわかります。例えば、タヒチでDNAを使って配偶体と胞子体の分布を比較すると、配偶体は胞子体よりも広く分布する種が観察されました。このように、配偶体で増えた個体は環境の変化に強く、シダ植物が生き残るための手段だと考えられます。
生物の多様性と保全へ
こうしたシダ植物の生態、とくに配偶体については未解明で、系統樹が整っていません。詳しく調べると、新しい種として分類し直すべき種類も出てきます。このような、小さくて気づかれにくい生き物の進化や系統も明らかにすることが重要です。それが、生物の多様性への理解を深め、保全活動へとつながります。
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