使われない資源や能力を有効活用するには
ゴミからメタンガスを回収
地球環境に対する負荷を減らすために、再生可能エネルギーの導入が日本でも重要な課題になっています。近年では、ゴミの中の食品廃棄物からメタンガスを取り出す方法が確立されて、ごみ処理場の横に「バイオガス回収プラント」が建設され始めています。ただし、その高い建設費がネックになり、地方の小さなごみ処理場では普及が進んでいません。
水処理施設の転用
バイオガス回収プラントの建設において最もコストが高いのが、メタンガスを取り除いた「残さ」のための水処理施設です。この課題に対処するために新しい施設を建設するのではなく、既存の施設の転用が研究されています。
通常、ゴミ処理施設の最終処分場では、ゴミを燃やして出た灰を地中に埋める処分が行われます。この時、埋立地からは灰の有害物質が溶け出した水が染み出てくるので、処分場の横に「浸出水処理施設」が建設されます。水処理施設はピーク時の浸出水を処理できる能力に設計されますが、建設後1~2年でピークが過ぎてしまうため、その後は処理能力が余ります。この余剰能力をメタンガスの残さ処理に活用できないかという考えです。和歌山県の2つの処分場をモデルとして計算が行われた結果、どちらも9割以上が余剰能力になっており、転用が可能であることがわかりました。今後は、全国のごみ処理場の余剰能力をバイオガス回収に使用した際に見込まれる発電総量を計算して、実際の施設建設につなげる計画です。
新たな資源の可能性
このような施設の余剰能力だけでなく、使われずに捨てられるものにも有効活用できるものがまだたくさんあります。例えば、果樹の剪定(せんてい)で切られた枝は、これまで果樹園の隅に放置されていました。しかし、これらを炭にしてから果樹園に埋めれば、土壌改良になり、さらには炭素の貯留にもつながります。つまり、果樹園を炭素貯留のインフラとして活用できます。不要なものでも、新たな視点を取り入れれば資源となる可能性を秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 システム工学部 環境デザイン学領域 環境科学メジャー 教授 吉田 登 先生
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