文字の識別とデザインの関係
漢字は万国共通か
長距離移動には欠かせない高速道路。他府県にまたがる初めての道であっても目的地にたどり着けるのは、地名を記した標識があるからです。あの緑地に白文字で書かれた大きな看板は、文字を大きく見せる効果があり、遠くからでも文字を識別しやすいようになっています。
ただし、現在の標識は、漢字に対してローマ字が小さすぎるという欠点もあります。現状では、ローマ字が漢字の50%のサイズなので、漢字が読める距離からは、まだローマ字が読めないこともあるのです。漢字とローマ字を同時に違和感なく見えるようにするためには、ローマ字を漢字の70%のサイズにするのが理想的です。しかし、それでは、盤面上にすべての情報を盛り込むことが難しいので、65%にした標識デザインも提案されています。
ところで、もし外国人も標識の中の漢字に反応したら、ローマ字はいらなくなりますね!? 実験したところ、自主的に漢字を見て地名を区別した外国人は、ローマ字の地名だけを見ていた外国人よりはるかに多いことがわかりました。区別できた人の中には、全く日本語を勉強したことのない人も含まれています。象形文字を起源とする漢字には、図形的要素が多分に含まれるので、彼らは漢字を図形としてとらえていたようです。例えば、船という字のつくりを「三角屋根の家のかたち」として見るとか、自分なりに意味づけをして覚えていたようです。
もっとも、外国人が標識内の日本語地名を区別できるからといって、標識からローマ字標記を消していいということにはなりません。ですが、漢字が例えば絵文字のように豊かな情報を万人にもつ可能性がわかると、今後の標識デザインにも新たな方向が見えるかもしれません。
デザインは理と芸の融合
デザインを学ぶには、とにかく手を動かして作品を実際に作ることが欠かせません。しかし、作り手がただ作ることに満足するだけでは、いいデザインにはなりません。デザインされるものは、いつか誰かに使われるものです。標識の例でいえば、ドライバーにとって見えやすい、わかりやすいものであることが第一です。そして、美しいものである必要もあります。作り手には、さまざまな条件を踏まえて、それを統合する総合力が必要とされます。
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