コオロギで、食料危機を乗り越える?
予想される食料危機
地球人口は2050年に97億人に達すると予測され、タンパク質を奪い合う食料危機が起きると言われています。日本は食料を輸入に頼っているため、対岸の火事とは言えません。タンパク源である肉の生産を増やそうにも、温室効果ガス全体の4%を畜産物が出しているなど、安易に増やすことはできません。
昆虫をタンパク源に
そこで肉に代わるタンパク源として昆虫が有望視されています。同じ温室効果ガス排出量で、昆虫は肉の1000倍の量が生産できます。昆虫を利用した循環型食料生産システムの構築は内閣府主導の「ムーンショット型研究開発事業」の1つとして進められており、地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた2050年を見据えた革新プロジェクトを社会実装まで担う研究を実施されています。
循環型食料生産では、まず食品ゴミを雑食性のコオロギに与え、良質なタンパク質に変換します。虫をそのまま食べることは、すぐには受け入れてもらうのが難しいので、粉にして畜産や養魚用の飼料にすることも考えられています。この循環を回すことで、無駄のないタンパク質が生産できます。今の段階は、使うコオロギはほぼ野生のままの状態ですが、飼育しやすく大量生産が可能な品種への改良が必要となります。世代交代をしながら改良する時間を省くため、ゲノム情報を利用して短期間での改良が達成されようとしています。
おいしいコオロギをめざして
食品として活用するためには安全性の検証も必要です。この研究ではすでに経済協力開発機構(OECD)に準拠した試験を実施し、食事としての量を摂取しても安全だと実証されました。食品アレルギーについては特定品目などに登録して注意を喚起する対策が考えられています。最も大切なのは、昆虫食を社会に受け入れてもらうことです。それには、仕方ないから食べるのではなく、おいしいという前提が重要です。これまでも見た目に反して受け入れられてきた食品はたくさんあり、「おいしいコオロギ」をめざした研究が進められています。
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長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 アニマルバイオサイエンス学科 教授 小倉 淳 先生
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